スペインの名将の気になる「習性」。清水の5バック採用は不吉な兆し? (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by AFLO

 このまま凌げれば、悪くない結果だった。

 しかし後半の清水は、受け身に回るというよりも腰が引けてしまう。暑さによる疲労困憊か、終盤での失点が多い心理的作用か。後半27分、チアゴ・サンタナ、カルリーニョス・ジュニオのブラジル人2トップを下げると、相手に脅威を与えられなくなった。前線のプレスがきかず、中盤に縦パスを入れられた。次々にセンターバックが食いつくも、いなされ、両ワイドが絞ったことでサイドのスペースを使われてクロスを打ち込まれ――。

 冒頭の決勝点は必然だった。

「(2失点目は)全体の運動量が減って、ボランチの脇をつかまえきれなくなり、センターバックが釣り出されて、ズレが起きていた。プレスのかけ方など、誰が入っても同じように守れるようにしないと......」(清水・福森直也)

◆Jリーグ史上最大の移籍失敗例。代表クラスの超大物がまさかの結果に

 単刀直入に言って、ロティーナの戦術はまだ浸透していない。4-4-2から5-3-2にして守備を固めたのも、苦肉の策だろう。セレッソ時代の堅牢さをつくり出すのに苦労している。守備は各ラインが破られてしまい、最終ラインも耐え切れず、攻撃はポゼッションに取り組みたいはずだが、そこまで手が回っていないのが実状だ。

 スペイン人監督がプレーモデルを運用するには、土台になる3つのポジションがある。まずは攻守に気が利き、各ラインを安定させられるボランチだろう。そして高さやパワーに優れるか、あるいは裏に抜けられるストライカー。そして、FWとセットでクロス一発で得点を生み出せるアタッカーだ。

 セレッソ時代の藤田直之、奥埜博亮、ブルーノ・メンデス、水沼、坂元達裕は、戦術的キーマンだった。

 ちなみにこの傾向は、スペイン時代から変わらない。セルタでは4-2-3-1のバランス型でチャンピオンズリーグ出場権を獲得し、エスパニョールでもスペイン国王杯優勝という結果を残した。しかし、デポルティーボ・ラ・コルーニャ、ビジャレアルではメンバー編成の問題を抱えて、システムのテコ入れで5バックを採用するが、結果は2部降格だった。

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