J2ウォッチャー平畠啓史が序盤戦を詳しく分析。上位3チームが好調な理由は?

  • 池田タツ●取材・文 text by Ikeda Tatsu
  • photo by Getty Images

<試合内容で楽しませる京都>

――今季から曺貴裁監督が就任した京都サンガF.C.も序盤から強さを見せています。

平畠 まず、曺監督になってこういうサッカーになるだろうなと、想像していた通りになっていますよね。非常にアグレッシブ。リスクを負っているので面白いし、すばらしいと思います。監督さんでここまでサッカーが変わるんだなと感じました。

 曺監督は選手に戦い方を伝える時に、メリットだけでなくそのやり方のデメリットも伝えているらしいと、あるインタビューで読みました。「こうやっておけば勝てるぞ!」だけではなく、「こういうリスクもあるからね」と伝えると。見ているとイケイケのサッカーに見えますが、選手の頭の中にはリスクについてもしっかり入っているんだなと思いました。

――局面によってはセンターバックのヨルディ・バイス選手もあがるので、1バックみたいな形になってますよね。

平畠 僕もおじさんになってきて、いろいろとリスクを取れない年齢になってきました(笑)。「俺らは普段リスクを負ってまでいけないけど、あいつらは危ないけどリスクを負っていくんだな」と、スタジアムでそう感じられるとお金を払う価値があると思えますよね。

「あれじゃあリスクを負わないで、ウチの会社と同じようなことやっている」みたいなサッカーには、お金を払う価値はないじゃないですか。やっぱり見ているほうは、ある程度リスクを負うところを見たいんですよね。エンターテインメントとしても、1人がうまいだけとかではなく、全員でリスクを負って何かを成し遂げようとしている姿勢は、本当に価値があるなと思います。

――曺監督はそういうことも考えていそうですよね。無観客でも挨拶に行くとか。

平畠 プロの興行なので、勝ち点3も大事ですけど、お客さんにいかに楽しんでいただくかも大事じゃないですか。楽しませ方はいろいろあると思います。スター選手を呼んでくるのも一つですよね。でも京都は試合の内容で楽しませようと。

 あと京都は選手層が厚い。シーズンが始まる前は、曺監督のサッカーのなかでピーター・ウタカ選手やヨルディ・バイス選手みたいな個がどう生かされるのか、勝手にいろいろ考えたりしました。でもフタを開けてみたら見事に2人がフィットしている。組織的って言い方がありますが、みんなが同じ方向を向いて「頑張ります!」だけじゃなく、いろんな特徴を持った人たちが一つになるのが組織的なんじゃないかと思わせてくれます。

 ベクトルは同じ方向に向いていてもサッカーには相手がいるので、自分たちの思うようにいかない時のほうが多い。その時は個の力が必要になりますよね。それがチームかなと。だから見ていて面白い。組織も目立つし、個人も目立つのが京都。すごくいいバランスだと思います。

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