アビスパ福岡11戦無敗。「勢い」のひと言では片づけられない強さがある

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Kyodo News

 ところが、今季の福岡に特徴的なのは、むしろ"追い込み"が利くこと。公式戦11戦無敗の間、決勝ゴールや引き分けに持ち込む同点ゴールを後半に決めた試合が、8試合もあるのだ。

 堅守のチームらしく、先制すれば強いのは間違いない。しかし、だからといって、先行逃げ切り策に失敗したら打つ手がない。そんな一本調子のチームではなくなっている。

 例えば、J1第11節のサンフレッチェ広島戦(2-1)では、先制後に一度は追いつかれながらも勝ち越しているし、ルヴァンカップ第4節のコンサドーレ札幌戦(1-1)では、先に失点しても追いついている。

 直近の試合、J1第16節の横浜FC戦もそうだった。

 敵将の早川知伸監督が「内容的に前半はパーフェクトに近い」と評したように、前半の福岡は横浜FCに完全にペースを握られたうえ、先制も許した。

 しかし、後半に入ると一転、福岡は相手の攻撃を高い位置から制御。奪ったボールを素早く縦へと運んで敵陣にて試合を進め、連続攻撃を仕掛ける。そんな展開から、FWブルーノ・メンデスの同点ゴールも生まれている。

 その後も攻勢に試合を運びながら、せっかく得たPKをFWフアンマ・デルガドが外してしまったのはもったいなかったが、後半に見せた怒涛の追い込みは非常に迫力あるものだった。

 こうした戦いのなかで、効果的な働きを見せているのが、今季新加入のMFジョルディ・クルークスである。

 27歳のベルギー人MFは身長172cmと体は大きくないが、半身で相手選手を抑え込むボールキープは力強く、右サイドの高い位置で確実にボールを収めてくれる。しかも、質の高いキックを放つレフティながら、プレー選択はカットイン一辺倒ではなく、縦への突破から右足でのクロスというプレーも非常に滑らかにこなす。

 力強さと機動力。福岡の戦いにはうってつけの人材だ。入国が遅れたクルークスの合流とタイミングを合わせたかのように、6連勝が始まったことは決して偶然ではないだろう。

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