サポーターに深々と頭を下げたイニエスタ。日本、そして神戸との「絆」

  • 高村美砂●文 text by Takamura Misa
  • photo by ⓒVISSEL KOBE

 イニエスタにとっては、サッカー人生の岐路に立たされた大ケガを乗り越えての契約延長だった。

「ACL(AFCチャンピオンズリーグ2020)で負ったケガは、僕のキャリアで復帰までの時間を最も要するケガになってしまいました。しかも、36歳でこのような大ケガを負ったことで正直、いろんなことを考えました。

 特に手術を決断するまでの時間、そして、実際に手術が行なわれるまでの時間は、本当に手術をするべきか、手術がうまくいくのか、という不安も大きく、僕自身のメンタリティ、サッカーへの思いを試されているようでした」

 ACLをベスト4で終えた直後、スペインに帰国した彼は病院のベッドの上で、何度も自問自答を繰り返したという。さらに言えば、手術を決断し、ポジティブにリハビリに向きあう日々のなかでも、心の揺れはあったと明かしている。

「長期にわたるリハビリになったこともあり、その過程での浮き沈みはありましたが、難しい状況の時も、とにかく努力と練習を続けて乗り越えてきました」

 だからこそ、復帰戦となった5月1日のJ1リーグ第12節のサンフレッチェ広島戦は、彼にとって特別な試合になった。15分間の出場ではあったものの、勝利の瞬間をチームメイトとともに味わえた事実に、素直な胸の内を言葉に変えていたのも印象深い。

「本当に幸せな気持ち。チームメイトとともにプレーできたことが何よりもうれしいし、勝ち点3をとることもできて、本当に完璧な一日になった」

 そして、その舞台で感じたサッカーをできる喜びは、イニエスタに新たな欲を植えつけた。

「ピッチに戻った今、改めて(サッカーへの)ワクワク感を感じています。自分が全力でピッチで表現したものを、今後もファンやメディアのみなさんに語り継いでいただけるような、そんなプレーをこの先のピッチで示していきたいと思っています。

 僕の一番のモチベーションは、ピッチで、自分にできる最高のプレーをすることに他なりません。そのために、日々のトレーニングを続けていますし、この先も長く続けていきたいと思っています。

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