鹿島復活のカギを握る20歳。「速くてうまい」ウイングがまた生まれた (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by AFLO

 ちなみに、このティーラトンのプレーに対してイエローカードは出なかった。出ても不思議のないプレーに対し、主審はなぜ出さなかったか。その悪質さより、松村のスピードに主審も目を奪われたからではないかと思う。ティーラトンに同情したくなるほど、松村は速かった。

 このPKを土居が決めスコアは3-1。横浜FMに50%以上あると見ていた逆転の目は大きく萎んだ。しかし、それでも筆者は、20%ぐらいはあるのではないかと密かに期待していた。

 ところが、そのわずか2分後、松村は再度、50メートルを5秒台で走るとされる快足を披露。横浜FMの息の根を止めるような決定的なプレーに関与した。

 右ウイングの位置で、同じく入団2年目の荒木遼太郎から縦パスを受けた松村は、再び走った。チャージにきた横浜FMの快足左ウイング、前田大然を跳ね飛ばすと、完全にトップスピードに乗った。そしてゴールライン際まで前進。マイナスに折り返した。これが再び荒木の元へ。4点目のゴールのアシストとなった。

 その後、鹿島が1点、横浜FMが2点追加したが、試合を決定づけたのは、松村のこのプレーだった。

◆鹿島アントラーズの荒療治は吉か凶か。シーズン途中での監督交代の意外な歴史

 昨季は13試合に出場。だがそのすべては交代出場で、今季もこれが10試合目だったが、先発は3試合にとどまっていた。高卒で同期入団の荒木、さらには染野唯月(現在ケガで離脱中)にも後れを取っていた。

 荒木と染野が技術系の選手であるのに対し、松村はサイドで威力を発揮するスピード系。サイドハーフが真ん中に入りがちな、旧ブラジル式4-2-2-2的な4-4-2を敷く鹿島のサッカーと相性がいいのは荒木。松村が出場機会に恵まれない理由のひとつはそこにある。

 だが、松村はこの2試合前に行なわれたFC東京戦(5月9日)に、今季2度目の先発を飾ると、その前半終了間際、ゴール正面から鮮やかなミドルシュートを叩き込んでいた。ザーゴから相馬直樹への監督交代を機に、松村の出場時間は確実に増えている。

 荒木は、言ってみれば従来型の好選手だ。個人的には、ドリブルにも光るものがあるので、サイドアタッカーとしても十分いけそうな気もするが、どちらかと言えば、中盤タイプだ。小野伸二、中村俊輔、中田英寿、稲本潤一、藤田俊哉、名波浩、遠藤保仁、中村憲剛......の系譜だ。

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