川崎フロンターレで唯一欠かせない存在。田中碧が持つ特殊能力とは? (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 中盤での攻防で優位に立つことで、全体に余裕が生まれる。機転を利かせて適切な位置を取り、判断を下し、五分のボールを制し、チームを健全に動かせるか。余談だが、かつてFC東京ではMF橋本拳人がこの役回りを演じて優勝争いをしていたが、彼が抜けた穴はいまだ埋められていない。

 昨シーズンは田中が先発した試合で、川崎は一度も負けていない。18勝5分けと無敵。一方で、先発を外れた試合は3敗を喫している。

 数字は雄弁である。

 札幌戦の田中は疲れを引きずっているように映った。細かいミスも出た。ゴール正面で不用意にFKを与えるファウルもあった。それでも、手ごたえをつかみかけていた相手の夢を断っている。その実力は、Jリーグでも突出している。U-24日本代表のアルゼンチン戦もそうだったが、国内組で唯一、すぐに世界のトップレベルで適応できる日本人選手と言えるだろう。

 川崎という巨大な生き物を動かしているのは、田中碧だ。

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