偶然生まれた「チャンピオンシップ」が川崎と名古屋にもたらしたもの

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

"ファーストレグ"は、川崎が面白いように名古屋を攻め立て、4-0と先勝した。

 試合開始早々の3分、相手ゴール前での流れるような連係からMF旗手怜央が先制ゴールを決めると、川崎は前半のうちに3得点。試合終盤の84分にも追加点を奪い、名古屋を突き放していた。

 この結果を受け、"セカンドレグ"の名古屋は「自分たちでも修正するところは修正しながら戦った」と、名古屋のMF稲垣祥。「それがいい方向に表われていることも多々あった」と振り返る。

 しかし、名古屋が高い位置から川崎に圧力をかけ、主導権を握って進めているかに見えた試合も、31分にCKから川崎に先制点を許すと、後半59分までに計3失点。たちまち勝負は決した。

 その後、2点を返して1点差まで迫りはしたが、"たられば"で振り返るほど惜しい内容の試合ではなかった。

「やっぱり地力の差で負けた。今の僕たちの力を認識できた2試合じゃないかと思う」

 稲垣がそう続けたとおりだ。

 これで、首位の川崎と2位の名古屋との勝ち点差は9にまで広がった。今季はまだシーズンのおよそ3分の2を残しているのだから、十分に追いつくチャンスはあるとも言えるが、裏を返せば、およそ3分の1しか終わっていないのに、これほどの大差がついてしまった、とも言える。

 偶然が重なって生まれた"チャンピオンシップ"も、終わってみれば、川崎の強さを際立たせただけ。むしろ皮肉なことに、優勝争いへの興味を削いでしまいかねない結果となった。

 川崎の強さについては、改めて述べるまでもないだろう。

 チームとしての完成度の高さにおいても、選手個々の能力の高さにおいても、現在のJ1で抜きん出ている。一発勝負ならともかく、長いシーズンを通して川崎に対抗できそうなチームは見当たらない。

 事実、今季の川崎はここまで14試合を戦い、12勝2分け。まだひとつも負けていないどころか、引き分けすらふたつしかないのである。

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