J1昇格組・徳島ヴォルティスの実力を侮るなかれ。キラリと光る19歳&20歳も注目

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by Getty Images

 臨機応変なポジショニングでボールを保持する時間を増やし、コンパクトな陣形を保ってトランジションの速さを実現。能動的に試合を進めることもできれば、相手のウイークポイントを突く戦いもできる。現代的なそのサッカーの根幹は、リカルド・ロドリゲス監督が去ってもそう簡単には崩れないだろう。

 後任に就いたのは、同じスペイン人のダニエル・ポヤトス監督。継続性を重視して選任された新たな指揮官の下、戦いのベースは大きく変わらないと思われる。

 ただし、新型コロナウイルスの影響で新監督の入国が遅れ、指揮官不在のまま新シーズンをスタートせざるを得なかったのは、小さくないダメージだっただろう。開幕から5試合勝利なしと、大きく出遅れてしまった。

 それでも、前任者のやり方を知る甲本偉嗣コーチの下で徐々にJ1の水に慣れていくと、第6節からは3連勝を達成。そして迎えた第9節、徳島は昨季までの監督が率いる浦和レッズとの一戦に臨んだ。

 試合は0−1で敗れたものの、徳島の戦いぶりは実に勇敢だった。とりわけ、前半は素早いボール回しと即時奪回の意欲が高く、相手陣内で試合を進める時間が長かった。「前半の内容は徳島が上回っていたと思う」とリカルド・ロドリゲス監督も、"教え子たち"の奮闘を称えている。

 守りを固めて、一発のチャンスにかける。かつての昇格組にはそんなチームが多かったが、徳島はボールを大事にする自らのスタイルを保ち、最終ラインも高い位置を取って相手を押し込む戦いを実現していた。同様のスタイルを目指す浦和がまだ発展途上にあったこともあるが、組織の完成度で言えば徳島が明らかに上回っていただろう。

 中2日で行なわれたC大阪との一戦でも、徳島はアグレッシブな姿勢を示し、2−1で勝利を収めた。これで、開幕10試合で4勝2分4敗。指揮官不在のなかで堂々たる戦いを見せている。

 昨季からのメンバーを基盤とし、大黒柱のMF岩尾憲を中心とした組織力の高さは、J1でも十分に通用することを証明している。個々に目を向けても、キラリと光るタレントを見つけることができる。

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