川崎フロンターレ相手にやってはいけないこと。「撃ち合う」は〇でも「下がる」は× (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

 最強の盾は、もはや存在しない。

 そこでFC東京が「撃ち合う」を挑むのだとしたら、前線のプレスと連動し、ラインを押し上げるべきだった。最終ラインの設定が低すぎた。それはどこかに「前半は0-0でもいい」という目論見があったからだろう。事実、後半からはアダイウトンを投入することで活路が開けた。ブラジル人アタッカーは守備面で脆弱な川崎の右サイドからダメージを与えられるはずで、実際にそうだった。

 だが、少しでも腰が引けたら、川崎には食われる。よほど堅牢な城砦戦を展開できない限り、打ち負かされる。相手は城砦を攻略するスペシャリスト集団。左右から城門に迫りながら、中央の守りを手薄にし、そこを必死に守ったと思った瞬間、もう一度、押し寄せてくる。トランジションで鍛えられ、失ったボールを奪い返しての波状攻撃に遭い、撃沈するのがおちだ。

 川崎を相手に、付け焼き刃の戦いは通用しない。札幌、鳥栖、大分はシーズンを通して練度を高め、太刀打ちできている。FC東京はつなげようとしたが、結果的に中途半端になった。少なくとも、開始10分は守備強度を懸け、「撃ち合う」という意志を示すべきだった。それによって川崎への恐怖心は消えて、強気に守り、強気に攻められたかもしれない。

 ひとつ言えることがある。相当に守備ブロックが堅固でない限り、川崎を相手に「下がる」ことは敗北必至だ。

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