日本代表の正GK争い戦国時代。エスパルス権田修一は経験値で勝負だ (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by AFLO

 ロティーナ監督はあいかわらず渋い表情を崩すことはなかったが、結果だけでなく、その内容にも手応えを得ている様子だった。

 前線も含めたハードワークが堅守構築への重要なポイントとなるが、見逃せないのは、最後方に構える権田修一の存在だろう。ポルトガルから今季日本に復帰した新守護神は、その実績を考えても、失点減のキーマンとなることは間違いない。

 見事だったのは、鳥栖戦でのハイパフォーマンスだ。際どいシュートを次々に浴びながらもことごとくストップし、開幕から快進撃を続けていた古巣の連勝を食い止めている。

 柏戦では目立ったセーブシーンはなかったものの、強い風と横殴りの雨が降りつける悪コンディションのなかでもプレー精度を落とすことはなかったし、声で人を動かし、いい形でシュートを打たせないコーチチングも冴えていた。

 権田のプレーを見ていると、GKとは経験がものをいうポジションだ、ということがあらためて理解できる。

 味方への声がけだけでなく、つなぐ場面と蹴る場面、あるいは飛び出す場面と、構える場面。状況に応じたプレー判断に間違いがない。もちろん、キャッチングやクロス対応といった基本技術の高さも含め、名GKとしての貫禄が備わってきた印象である。

 今回の日本代表メンバーにも、当然のように招集されている。

 森保一体制下での32試合中、GKのなかでは最多の15試合に出場し、失点はわずかに5。アジアカップ、ワールドカップ予選と重要な試合では11試合中10試合でゴールを守っていることからも、指揮官からの信頼の厚さがうかがえる。

 権田が日本代表デビューしたのは、21歳だった2010年のこと。2012年にはロンドン五輪にも出場し、2014年のワールドカップメンバーにも選ばれた。

 もっとも、A代表にコンスタントに招集されながらも出番はほとんどなく、ベンチ外も経験するなど、代表では悔しさを味わったことのほうが多いだろう。それでも欧州でのプレーを経験し、たくましさを身につけ、森保監督のチームになってようやくその存在感を示しつつある。

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