震災から10年...苦境に立ち向かうベガルタ仙台。再び希望の光となるために (3ページ目)

  • 戸塚 啓●取材・文 text by Totsuka Kei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 はたして、後半はピッチ上の色彩が変わるのだ。トップ下から1トップへポジションを上げたマルティノスに、立て続けにチャンスがめぐってくる。

 ユアテックスタジアム仙台が拍手に包まれたのは58分だ。ダブルボランチの一角からトップ下へポジションを上げた上原力也が、マルティノスのシュートの跳ね返りをプッシュした。右サイドから左サイドへ展開し、そのまま足を止めずにゴール前へ詰めたことが奏功した。

 その後も相手ゴールへ迫った。決定機を数多く作り出すことはできなかったが、後半のシュート数は7対5と相手を上回った。83分に5点目を失ったものの、最後まで前へ出ていく姿勢を見せていった。

 キャプテンマークを巻いて出場した蜂須賀孝治は、悔しさを押し殺すように話した。自らを責め、肩を落とした。

「震災から10年の節目の年で、復興応援試合で、相手が川崎で、最高の舞台だなと思った。今日の試合に勝つか負けるかで天国と地獄ぐらい未来が変わると思って、人生を左右すると思って望みました。

 結果は1-5で、歯が立たなくて......。震災でお亡くなりになったサポーターもたくさんいると思うのですが、その人たちのことを思うとホントにやってはいけない試合でした」

 手倉森監督も、力の差を認めた。関口の想定外の負傷交代も、キャプテンのシマオ・マテを出場停止で欠いたことも、2列目の選択肢となるイサック・クエンカの不在を口にすることもなく、「身をもって王者の強さを思い知らされた」と振り返っている。

勝負が決しても選手たちを鼓舞し続けた手倉森監督(左から2番目)勝負が決しても選手たちを鼓舞し続けた手倉森監督(左から2番目)

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