震災から10年...苦境に立ち向かうベガルタ仙台。再び希望の光となるために

  • 戸塚 啓●取材・文 text by Totsuka Kei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 厳しい現実を突きつけられた。

 3月6日に行なわれたベガルタ仙台対川崎フロンターレ戦は、仙台にとって特別な一戦だった。

 昨シーズンの仙台は、ホームで1勝もできなかった。2009年に2度目のJ1昇格を果たして以降、クラブワーストとなる17位に沈んだ。コロナ禍の特別なレギュレーションでなければ、J2に降格していたところだった。

 チーム最年長の関口訓充は、「ホームで一度も勝てなかったのはホントに情けないし、サポーターに申し訳ない気持ちでいっぱいでした」と振り返る。だからこそ、2021年シーズンのホーム開幕戦となった川崎戦で、負の連鎖を断ち切るとの思いを強く抱いていた。

 昨年のJ1を圧倒的な強さで制した川崎には、リーグ戦で14試合連続、ホームゲームでは7試合連続で勝っていない。2017年10月のルヴァンカップ準決勝第1戦で競り勝っているものの、リーグ戦となると2013年8月が最後の勝利となっている。

 だが、その8シーズン前の白星を生み出した指揮官が、2021年シーズンはチームの先頭に立っている。手倉森誠監督だ。リオデジャネイロ五輪代表監督と日本代表コーチを歴任して国際的な経験を積み、2019年からJ2のV・ファーレン長崎を率いていた53歳は、東日本大震災から10年の節目に合わせて仙台に還ってきた。

 手倉森監督のもとでリスタートをはかるチームは、2月27日の開幕節でサンフレッチェ広島と引き分けた。アウェーで勝点1をつかみ、3月6日のホームゲームを迎えた。

 川崎戦に臨む指揮官は、静かな闘志を燃やしていた。

「震災に見舞われた2011年も、アウェーの広島戦で引き分け、中断明けの第2戦は川崎戦だった。昨シーズンはホームで一度も勝てなかった仙台が、震災から10年目の最初のホームゲームに川崎を迎える。当時の自分たちを思い出せ、と言われているような気がしてならないんです」

 タフなゲームは想定していた。手倉森監督は前向きなメッセージをチームの内外に発信しつつも、「川崎は強いです。10年前も強かったけれど、今はもうJ1の王者ですから」とも話していた。

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