名古屋に大量補強の成果。猛攻を浴びても楽しむカテナチオのエッセンス (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 策士でもあるイタリア人監督、マッシモ・フィッカデンティは、流れを引き寄せるために大胆な手も打っている。後半9分、柿谷、長澤、相馬勇紀と3人を同時投入。これだけの選手を途中投入できることが、名古屋の強みか。

「3人交代は用意していたわけではない。私はいつだって状況を踏まえて、戦術的に決断している。流れを持ってくるために、フレッシュな選手を入れた」(名古屋・フィッカデンティ監督)

 相手が消耗したところに、強力な援軍を送り込むようなものだった。たとえば柿谷は抜群のボールキープを見せ、相馬は左サイドで幅を作り、どちらも攻撃を活性化していた。しぶとく戦う札幌にゴール前でチャンスを作られつつも、流れを徐々に傾かせていった。

 その少し後、後半16分にフィッカデンティはもうひとつの手を打っている。右サイドの守備が相手と入れ替わる機会が多く、裏をつかれたり、ファウルでFKを与えたり、危険な気配があった。そこで、右サイドバックでイエローも受けていた成瀬竣平に代えて宮原和也を投入。これで守備の綻びが消えただけでなく、攻撃も好転した。

 後半37分、名古屋は攻撃のエースとも言えるマテウスが、右サイドで高い位置までボールを運ぶ。そこでキープした後、自分を追い越した宮原へパス。宮原はすかさず、エリア内へボールを入れる。これを受けた前田直輝が相手をドリブルで外し、ゴールライン近くまで切れ込み、左アウトサイドでマイナス気味のクロス。最後は逆サイドから入っていた相馬が、これを流し込んだ。

「(プレシーズンから)逆サイドからクロスに入っていく動きはやっていたので、いい形で出てよかったです。今シーズンはポジション争いが激しく、チーム全体で競争力を上げるところで、それぞれが与えられた役割を果たして、チームが結果を出していけたらと思っています」(名古屋・相馬)

 相馬、柿谷は開幕戦の先発選手。選手層の厚さが伝わるだろう。終盤は高さ強さのある木本を入れ、守備の強度を上げた。猛攻を浴びたが、二重三重の守備は堅く、崩れていない。

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