J開幕戦番狂わせ勝利の功労者は、世界でも希少なフィーゴ似ウイング

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by KYODO

 一昨年のシーズンは仲川輝人(横浜F・マリノス)、昨年のシーズンは三笘薫(川崎フロンターレ)。MVPに輝いた仲川に対し、三笘はベストイレブン止まりだったが、Jリーグは2シーズン続けて、ドリブルが得意なウインガーが大きな注目を集めた。

 昨シーズンでいうならば、三笘のみならず、坂元達裕(セレッソ大阪)もベスト11級の活躍を示した。さらに汰木康也(浦和レッズ)、松尾佑介(横浜FC)、相馬勇気(名古屋グランパス)等々、それを追う存在も目立っていた。

 サイドの選手を2枚置く4バックが増加。中でも4-3-3を採用した昨季の覇者、川崎に代表されるように、以下のような流れは、Jリーグにおいても顕著になりつつある。

 4-4-2<4-2-3-1<4-3-3。

 川崎の右ウイング、家長昭博の平均的なポジションは実際、4-2-3-1を採用していた2019年シーズン以前より、4-3-3を採用した2020年シーズンのほうが外側だった。ウイング色はいっそう強まっていた。 

 開幕したJリーグでも、その流れは見て取れた。ミゲル・アンヘル・ロティーナといえば、過去2シーズン、セレッソ大阪で中盤フラット型4-4-2を定番に采配を振ってきた監督だが、清水エスパルスの監督として臨んだ今季の開幕戦(鹿島アントラーズ戦)では、4-3-3色の強い4バックで戦った。まさに4-4-2<4-2-3-1<4-3-3を地で行く戦い方をした。スペインリーグで監督を務めていた時から、手堅いサッカーを売りにする監督として知られるが、より攻撃的になった印象だ。

 昨季16位の清水にとって鹿島は格上だ。この開幕戦の下馬評も「ホームの鹿島、断然有利」で一致していた。ところが結果は1-3。開幕節最大の番狂わせとなった。

鹿島アントラーズ戦にフル出場、勝利に貢献した中山克広(清水エスパルス)鹿島アントラーズ戦にフル出場、勝利に貢献した中山克広(清水エスパルス) 鹿島は4-4-2。しかも、両サイドハーフが外に張り出さない、4-2-2-2色の残る旧ブラジル的な4-4-2だ。両者の違いは、カルリーニョス・ジュニオ(清水の左ウイング)と土居聖真(鹿島の左サイドハーフ)、中山克広(清水の右ウイング)とファン・アラーノ(鹿島の右サイドハーフ)のポジショニングに顕著に表われていた。

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