栄華を極めた広島と酷似。完成形を迎えた今季の川崎につけ入る隙あり (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 結果的に川崎は2-2からしぶとく勝ち越し、勝利しているのだから、さすがの強さと言うことはできるだろう。決勝ゴールを決めたFW小林悠が「シーズンの始まりで、いいスタートを切りたかった。チームとしてしっかり勝ち切れたことはよかった」と、安堵の言葉を口にしているとおりである。

 しかしながら、川崎の闘いぶりからは、特に昨季半ばあたりで感じた、他を寄せつけない盤石の強さがなくなっているのも確かだろう。

 実際、昨季J1では驚異の勝ち点83を積み上げ、2位のG大阪に勝ち点18差をつけたとはいえ、リーグ戦ラスト10試合に限れば、成績は5勝2敗3分け。その間に無失点試合はひとつしかなく、失点増が苦戦を引き起こしていた様子がうかがえる。

 準決勝からの出場となった天皇杯を優勝で最後を締めくくったため、結果的にそれほど陰りは目立たなかったが、川崎のチーム状態は少しずつ下降曲線を描き始めていた。

 そして迎えた新シーズン。昨季終盤の流れを引きずるかのように、公式戦初戦にして早くも2失点である。

 だとすれば、この勝利をポジティブにばかりはとらえにくい。

 現在の川崎を見ていて思い出すのは、2015年のJ1王者、サンフレッチェ広島だ。

 当時の広島は、2006年途中から2011年までチームを率いたミハイロ・ペトロヴィッチ監督(現・北海道コンサドーレ札幌監督)が攻撃的なスタイルを確立。そして、2012年からあとを引き継いだ森保一監督(現・日本代表監督)が、前任者が築いたサッカーをベースに守備を整備し、勝てるチームへと仕上げられていた。

 その結果、2012年にJ1初優勝を果たすと、2013年も連覇。2014年は8位に終わったものの、2015年には2年ぶり3度目の優勝を果たしていた。しかも、年間勝ち点74、得失点差43は、3度の優勝のなかでも最高成績だった。

 翻って、川崎である。

 2012年途中から2016年までチームを率いた風間八宏監督(現・セレッソ大阪アカデミー技術委員長)がポゼッションスタイルを浸透させると、2017年から引き継いだ鬼木達監督が攻守のバランスを整え、就任1年目でJ1初優勝。2018年の連覇を経て、2019年は4位に終わるも、昨季は2年ぶり3度目の覇権奪還と、奇妙なまでにふたつのクラブの歩みは合致するのだ。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る