Jリーグを盛り上げてきた旧ユーゴ系監督。全員、記者会見が強烈だ (3ページ目)

  • 後藤健生●文 text by Goto Takeo
  • photo by Getty Images

 JFL時代は最寄り駅からスタジアムまでのシャトルバスはなく、一般の路線バスを利用せざるをえなかった。だが、本数が少なかったので、ある日、僕はちゃんと事前に時刻を調べてから観戦に出かけた。ところが、記者会見でポポヴィッチ監督が延々としゃべりつづけたので、とうとう乗ろうと思っていたバスに乗り遅れてしまったことがある。僕自身がした質問に答えてしゃべりだしたわけだから、途中で抜け出すこともできなかった......。

 しかし、最大の難物は、やはり"師匠筋"に当たるオシム監督だった。

 オシムの話は聴く人にも想像力が要求されるが、本当に面白かった。なにしろ、『オシムの言葉』という本がベストセラーになったくらいだ。「水をくむ人」とか「オオカミに追われるウサギは足がつらない」など、絶妙の比喩が面白いのだ(ジェフ時代に通訳をしていた間瀬秀一コーチ=前ブラウブリッツ秋田監督の絶妙の間もよかった)。

 だが、試合後の記者会見では、その日の試合でのプレーについてもっと具体的なことを聴きたいのに、話がすぐに抽象的で比喩的な方向に流れて行ってしまうので困ったものだ。

◆オシムと出会って人生が変わった。坂本將貴が大切にする2つの助言>>

 ある時は、記者仲間で何を聞きたいのかを打ち合わせておいて、ひとりの質問にオシムが答えたあと、もうひとりがフォローの質問をするといった連係プレーも必要だった。

 オシムが日本代表監督に就任してから、僕は彼に対する質問の仕方がだいぶわかってきた。ポイントがズレた質問をすると、オシムは「そうじゃなくてな......」とこちらの間違いを指摘するのだ。そこで、その習性(?)を利用して、ある試合の前日練習のあとの会見でトレーニングの内容についてこう聴いてみた。

「今日の練習は、守備面のこういうところがポイントだったんですか?」と。

 するとオシムは「そうじゃなくてな」と話を始めた。

「あのトレーニングは守備面よりも、攻撃側が重要で......」と、その内容を説明してくれたのだ。こちらは「やった!」と小躍りしたいくらいだった。

 しかし、オシムのほうもすぐに「しまった。引っかかった」と気づいたのだろう。僕の顔を見てニヤッと笑ったのだった。

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