Jリーグで勝利数の多い日本人監督の共通項。戦術優先ではなかった (3ページ目)

  • 後藤健生●文 text by Goto Takeo
  • photo by Getty Images

 西野と長谷川というふたりの名将には、実は大きな共通性がある。ふたりとも、現役時代は花形の攻撃的なポジションで、また若いころからスター中のスター的存在だったことだ。

 西野は浦和西高校(埼玉県)時代からエレガントなプレーと甘いマスクで女性ファンを魅了し、サッカー専門誌の表紙を飾るスターだった。一方、長谷川は「サッカーの町」として知られた静岡県清水市(現静岡市)で少年時代から有名な存在であり、高校選手権では清水東高校の「三羽ガラス」の一角として、国立競技場を埋めた満員の観衆を沸かせた。

 西野も、長谷川も、生まれながらのスターだっただけに常にポジティブで、周囲の思惑など気にしないで思い切ってプレーする習慣が身に着いていたのだろう。監督となってからも細部にはこだわらないで思い切ったことができるのは、そうした生い立ちに関係するのではないか。

 もちろん、そういう指導方法で結果を出せたのは、能力の高い選手がそろったG大阪のようなクラブの監督だったからでもあるのだが......。

 日本代表監督時代に、スター選手を尊重して彼らに自由にプレーさせたジーコ監督も、現役時代には前線の華やかなポジションでプレーし、サッカー王国ブラジルを代表するスーパースターだった。あるいは、バルセロナで超攻撃的なドリームチームをつくったヨハン・クライフも「空飛ぶオランダ人」として知られる世界のスーパースターだった。

◆J1移籍状況で見極める戦力ダウン必至のチームワースト3>>

<細部のこだわりがすごい監督たち>

 一方で、現役時代にゲームを組み立てたり、中盤でバランスをとるMFや最終ラインを統率するDFだった監督は、戦術的な規律やディテールにこだわることが多い。

 たとえば、J1でサンフレッチェ広島を3度の優勝に導き、現在は日本代表で手腕を発揮している森保一(J1通算92勝)は、マツダSC(現サンフレッチェ広島)時代にハンス・オフト監督に見いだされ、日本代表ではラモス瑠偉が奔放にプレーする中盤でバランスを取ることによって、監督の戦術をピッチ上で具現化する役目の選手だった。

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