有望な若手を次々と引き抜かれ...。ヴェルディ永井秀樹監督のジレンマ (2ページ目)

  • 会津泰成●取材・文 text by Aizu Yasunari
  • 写真提供:東京ヴェルディ

――2021シーズンはJ2から2チーム昇格、4チームがJ3に降格することになりますが、これについてはいかがでしょうか。

 昨シーズンは、J3降格はなかったので、下位チームも変な恐れもなく純粋に勝利を目指す戦い方をしてきた。今シーズンは、より「負けない戦い方」をしてくるケースもあるはず。勝利よりも負けないことを優先する相手に対して、我々はどういうデザインをして毎試合戦っていくか。

 もちろん全試合勝つつもりで、常に勝つための方法論を考える。守りを固めた相手に対しての勝ち方の方法論は、より緻密に考える必要がある。「うまくて賢いサッカーのできるチーム」にプラスして、我々に欠けていたように思う「強さ」を備えていくことを大切にして戦っていきたい。

――昨シーズン、目指すスタイルが浸透したことで、今シーズンはそれをより成熟させることがテーマになると思います。同時に、ここ一番での勝負強さを身につけることが躍進のカギになりそうですね。

 武道や茶道、華道、芸術などの世界には、師弟関係のあり方のひとつに「守破離(しゅはり)」という考え方がある。「守」は師匠に流儀を習い、その流儀を守ることで基本を身につける段階。「破」は、師匠の教え、流儀を極めた後、他の流儀も研究して、型を破ること。「離」は、師匠のもとを離れて、独自の境地を切り開いていくこと。

 歌舞伎の世界でも、故・十八代目中村勘三郎さんが、「型があるから破ることができる。型がなければ単なる形無し」とお話しされていた。基本がしっかりしていなければ、本物のオリジナリティは生まれない。サッカーも同じだと思う。

 選手は、我々コーチングスタッフが提示したことをよくやってくれる。でも最後、得点を奪うことは、言われたことだけをしていても厳しい。今シーズンは型を破る段階に入った。選手はより主体性を持ってアイデアを出して、プレーに生かせるところまで成長している。型を破っていくことで、「得点を奪う」という勝負強さも、2021シーズンはピッチで表現できると信じている。

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