オシム・ジェフで勉強した哲学を元日本代表MFはクラブ運営に生かす

  • 飯尾篤史●取材・文 text by Iio Atsushi

「オシムの教え」を受け継ぐ者たち(3) 第1回から読む>>
望月重良

 今から18年前、ジェフユナイテッド市原(現千葉)の監督に、大柄なボスニア人指揮官が着任した。彼の名は、イビチャ・オシム――。1990年イタリアW杯でユーゴスラビア代表をベスト8へと導いた知将だった。

 鋭いプレッシングと、後方から選手が次々と飛び出していくアタッキングサッカーで旋風を巻き起こした"オシム・ジェフ"は、瞬く間に強豪チームへと変貌を遂げる。のちに日本代表監督も務めた指揮官は、ジェフの何を変えたのか。その教えは、ともに戦った男たちの人生にどんな影響を与えたのか。「日本人らしいサッカー」を掲げた名将の薫陶を受けた"オシムチルドレン"やスタッフたちに、2022年カタールW杯前年のいま、あらためて話を聞いた。

 第3回に登場するのは、2003年シーズンの途中までと2004年シーズンに、オシム体制のジェフに所属した望月重良。直接指導を受けた時間は短いながら、選手時代だけでなく現役引退後のキャリアにも大きな影響を与えた"教え"を振り返る。

2003年から2006年7月までジェフの指揮を執ったオシム氏 photo by YUTAKA/AFLO SPORTS2003年から2006年7月までジェフの指揮を執ったオシム氏 photo by YUTAKA/AFLO SPORTS***

 アーセン・ベンゲル、フィリップ・トルシエ、そして、イビチャ・オシム――。

 この3人こそ、SC相模原のオーナーを務める望月重良にとって、最も影響を受けた指揮官である。

 本職のボランチではなくFWでの起用が多かったとはいえ、名古屋グランパスのルーキーイヤーから出場機会を与えてくれたのだから、のちにアーセナルを率いる世界的名将を慕うのは当然だろう。

 日本代表に初めて引き上げてくれたトルシエに感謝する気持ちも理解できる。

 しかし、オシムはどうだろう? 望月はオシムのもとで1年半プレーしたにもかかわらず、リーグ戦、カップ戦合わせてわずか10試合にしか起用されていない。

 サッカー選手にとっていい監督は自分を使ってくれる監督、とはよく言われることだ。

 それなのに、なぜ、オシムなのだろうか――。

「たしかに主力として使ってくれたかといえば、そんなことはなかった。でも、試合に使ってくれないから悪い監督という基準は、僕にはまったくない。そういう意味ではベンゲルだって、トルシエだって、レギュラーとして重用してくれたわけではないから」

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