オルンガだけじゃない。アジア各国が外国人Jリーガーを狙っている

  • 中山淳●文 text by Nakayama Atsushi
  • 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

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 また、2003年から大幅リニューアルによって拡大されたアジアチャンピオンズリーグ(ACL)の存在も、その傾向を後押しした。とりわけ最初のターゲットになったのが、ACLでの活躍によってアジア地域内でブランド化されたガンバ大阪の外国人アタッカーだ。

 2007年にサウジアラビアのアル・イテハドに移籍したマグノ・アウベス、2008年にUAE(アラブ首長国連邦)のアル・アハリに移籍したバレー、2009年にカタールのアル・サッドに移籍したレアンドロと、3年連続で中東マネーによる"強奪"にあった当時は、「ガンバ経由、中東行き」が、外国人Jリーガーのエリートコースとされたほどである。

 その後、2010年代に突入すると、今度は中国が国家的なプロジェクトの一環として、中国スーパーリーグの成長をバックアップ。各クラブが法外な金額で世界的に名の知れたスター選手を"爆買い"しはじめると、外国人Jリーガーの移籍先としても、中国のクラブが浮上するようになった。

 2015年に川崎から広州富力に移籍したレナト(現在は天津天海所属)、2018年に浦和から武漢卓爾に移籍したラファエル・シルバ、同年に武漢卓爾にレンタルで移籍した鹿島のペドロ・ジュニオール、あるいは昨年冬に鹿島から長春亜泰に移籍したセルジーニョなどがその例で、この冬も前述のエリキが中国に渡ったほか、セレッソ大阪のマテイ・ヨニッチの中国行きの噂も報じられている。

 中国スーパーリーグでは、政府が自国通貨の海外流出を防ぐように各クラブに支出抑制を指導しているため、今年から選手の年俸に上限を設けるサラリーキャップ制が導入された。これにより大物外国人選手の獲得が難しくなり、今後はさらに比較的安価で優秀な外国人Jリーガーを獲得する傾向に拍車がかかりそうだ。

 過去の歴史を紐解けば、外国人Jリーガーがヨーロッパのクラブに移籍し、成功を手にした例もいくつか存在する。

 その代表例が、2003年に京都パープルサンガからPSV(オランダ)に移籍し、その後もマンチェスター・ユナイテッド(イングランド)で数々のタイトルに貢献した元韓国代表のパク・チソンと、2008年に東京ヴェルディからポルト(ポルトガル)に移籍し、2014年W杯にブラジル代表として出場したフッキ(現在上海上港に所属)だろう。

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