オシムに激怒された坂本將貴の回顧。翌日告げられた言葉で真意を知った (3ページ目)

  • 飯尾篤史●取材・文 text by Iio Atsushi

「僕らが『オフが欲しい』と言っても、『お前たち、夜遊びがしたいからオフをくれ、と言っているだけだろう』と。でも、練習が面白くて試合も勝っていたから、僕はオフがないことは気にならなかったですね」

 2003年7月20日には、念願のステージ制覇に向けた大一番が訪れる。J1リーグ1stステージ13節のジュビロ磐田戦――。

 11節終了後に首位に立っていたジェフは、前年に完全優勝を成し遂げた王者で、勝ち点2差の3位につけるジュビロのホームに乗り込んだ。

 試合はグラウに先制ゴールを許したものの、崔龍洙(チェ・ヨンス)のPK、サンドロのゴールでジェフがひっくり返す。だが、わずか1分後、ジヴコヴィッチのクロスを前田遼一に決められて追いつかれてしまう。ゲームは2-2の引き分けに終わった。

 勝っていればステージ優勝に大きく近づいていた。そして、勝てるゲームでもあった。とはいえ、3位のジュビロの自力優勝の芽を摘み取るドローであり、2位の横浜F・マリノスと勝ち点1差で、依然としてジェフが首位に立っていた。

 ジェフにとっては勝利に等しいドロー――メディアはそう伝えた。ところが試合後、ロッカールームではオシムの怒声が響いていた。それは、ジヴコヴィッチのマークに当たった坂本に向けられたものだった。

「お前がクロスを上げさせたから、試合に引き分けたんだ!!」

 その後、スタジアムの室内練習場で試合に出場した選手たちがストレッチをしていると、坂本はコーチから「オシムさんが明日、ランチに誘っているぞ」と告げられた。

 翌日、オシムと昼食をともにした際、坂本はこんな言葉をかけられた。

「いいプレーは誰もが覚えているが、ミスは意外と忘れてしまうから、その場で注意しなければならない。ああいうひとつのミスによって大事な勝ち点を失い、優勝を逃すことがある。お前は影響力があるし、喋れるんだから、チームメイトに伝えてほしい。だから、あえてお前に厳しく言ったんだ」

 坂本はオシムの指摘を素直に受け入れ、納得した。

「勝つために必要なことだな、と感じましたね。そもそも怒られたことに不満は一切なかったですし。オシムさんがすごいのは、あの頃、シゲさん(望月重良)とか、試合に出てない選手も不満を漏らしていなかったこと。オシムさんの練習をしていたら、自分がうまくなるっていう実感もあったし、選手起用の基準が明確で平等というのも大きかったと思いますね」

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