「異端」の矢板中央がベスト4進出。前時代的スタイルの凄みを発揮した (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 木鋪虎雄●撮影 photo by Kishiku Torao

 高橋監督が振り返る。

「(2回戦で)徳島市立、(3回戦で)東福岡と対戦してきて(3回戦から)中1日。疲労度が心配だったが、立ち上がりは足が止まって、劣勢の時間が続いた。前半は相手の勢いに飲まれていた」

 そこで、高橋監督は「ディフェンス陣ががんばっていたので、(攻撃の)活性化を図ろうと」打った手は、前半40分でのMF小川心の投入。しかも本来のMFではなく、2トップの一角としてFWでの起用だった。

 指揮官曰く、「(どう転ぶか)流れを見よう」という狙いの交代策ではある。「ドリブルが得意でアイデアを持っている」という左利きのテクニシャンだけに、前線でボールを収めて攻撃の時間を作り、試合の流れを変えてくれれば、という思いだったのかもしれない。

途中出場で先制ゴールを決めた矢板中央の小川心途中出場で先制ゴールを決めた矢板中央の小川心 ところが、後半49分、その小川が試合を決める大仕事をやってのける。

 小川は中盤でのボール奪取に合わせてDFラインの裏へ走り出し、ロングパスを受けると、まずは巧みなファーストタッチでボールを浮かせ、追いすがる相手DFをかわす。あとは落ち着いてGKの位置を確認し、左足でシュートを流し込むだけだった。

「監督から『FWでいくぞ』と言われたときは、正直ビックリした」という小川だったが、「ディフェンス陣が失点ゼロで守ってくれていたので、自分が試合を決めようという思いでピッチに入った」

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