二冠達成。中村憲剛は川崎の切り札であり監督にとって心強い存在だった

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 代表撮影●JMPA・ベースボール・マガジン社

 川崎フロンターレにとって天皇杯決勝は、ふたつの意味において非常に重要な試合だった。

 ひとつは言うまでもなく、カップ戦王者がかかるタイトルマッチであったということ。とりわけ今季はすでにJ1を制し、「複数タイトル獲得」を目標に掲げていた川崎には、同じ舞台で涙を飲んだ4年前のリベンジという以上の意味があった。

 そしてもうひとつは、長年クラブを支えてきた40歳、MF中村憲剛の現役ラストマッチであったということだ。川崎を率いる鬼木達監督にしてみれば、勝って中村を送り出すことはもちろん、中村をピッチに立たせることは、なかば義務でもあっただろう。

 試合は、川崎が1-0で勝利した。天皇杯初優勝を果たすとともに、初の二冠を達成。記録的な強さでJ1を制した今季は、クラブ史上初となる複数タイトルを獲得する記念すべきシーズンにもなった。

天皇杯で初優勝を飾って二冠を達成した川崎フロンターレ天皇杯で初優勝を飾って二冠を達成した川崎フロンターレ しかしながら、その試合に中村が出場することは叶わなかった。

 ベンチ脇でウォーミングアップを続け、出番を待ち続けた背番号14は、ピッチの外で試合終了のホイッスルを聞くことになった。歓喜の瞬間、中村も、そして鬼木監督も、まったく心残りがなかったと言えば、ウソになるのかもしれない。

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