ラフプレーをした選手をキャプテンに。永井秀樹監督は何を思ったのか (2ページ目)

  • 会津泰成●文 text by Aizu Yasunari

「昨シーズン途中で監督に就任した時、ヴェルディの進んでいる方向性や育成力というものを前面に出しつつ再建していく、これまでのスタイルから大きく舵を切るという意味で、ジュニアからヴェルディ育ちで、当時J2所属ながら、日本代表にも選出された渡辺皓太をキャプテンに指名した。それがいきなり、F・マリノスに移籍することになった。

 今シーズンは、ユース時代からの教え子でもあり、皓太と同じようにヴェルディ育ちでトップに昇格して、将来的にはA代表でも活躍できるだけの実力を備えた、藤本寛也を指名した。
でも寛也も、シーズン途中で海外チャレンジを選んでいなくなってしまった。『じゃあ次のキャプテンはどうしようか』と考えた時、自然発生的に、本当のリーダーが出てくるような雰囲気作りをするやり方のほうが、チーム全体の底上げにも繋がるような気がした。

 今はリーダーというわかりやすいポジションを敢えて置かず、それぞれが仲間を信じて、助け合い、ひとりひとりが『俺がキャプテンだ』という思いでいてほしい。全員でカバーすることで、より強固な組織になる気がしている」

 現在、キャプテンは試合ごとに、大久保嘉人、佐藤優平、小池純輝、平智広など、経験値の高い選手を中心に交代で任せている。そんなキャプテンのひとりには、周囲が意外に思う選手もいた。今シーズン、ジュビロ磐田から移籍してきた高橋祥平だ。

 ジュニアからヴェルディ育ちの高橋は2009シーズンにトップ昇格。実力が認められて2012年の年末にJ1の大宮アルディージャに移籍。その後はヴィッセル神戸、磐田と活躍の場を変えて実績を積んできた。そして今シーズン、8シーズンぶりに、期限付き移籍でヴェルディに戻ってきた。

 J1では通算185試合出場と実績十分の高橋は、読みの鋭さ、相手との駆け引きに長けた能力の高さは誰もが認めるところだ。ただ、過去には必要以上に熱くなりすぎてしまい、ラフプレーで退場することもあった。今シーズンも、高橋のそうした一面が出てしまった試合があった。

 8月8日に行なわれた第10節、藤本寛也のヴェルディでのラストゲームでもあったFC琉球戦――。

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