名門エスパルスの復活に何が必要か。不敵な19歳の躍動に見た希望の光 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • ヤナガワゴーッ!●撮影 photo by Yanagawa Go

 トップクラスでは、シュートを打つことそのものが簡単ではない。前節のコンサドーレ札幌戦でも、交代出場で4本のシュートを放っているが、アタッカーとしての素養があることは一目瞭然だ。

 先制点のシーンでは、左サイドに流れてボールを受けると、1対1を果敢に挑む。鋭いステップで縦に抜き切って、マイナスのグラウンダーパスを左足で折り返し、アシストを記録した。

「鈴木唯人がドリブルで相手を抉ってくれて。試合を通して脅威になっていたと思います。(自らのゴールも)お膳立てがすばらしかったですね」(清水・金子)

 鈴木は、ラインのはざまを漂うセンスが抜群に長けている。巧みにボールを呼び込み、前を向くのだが、その動きが自然で無駄がない。それ故、余裕を持って次のプレーを選択できる。高いレベルでプレーする資質を備えていると言えるだろう。後半になっても、ラインの間で受け、逡巡なく右足を振り、シュートはGKの手に収まったが、センスを見せつけた。

 そのシュートがネットを揺らせるかどうか――。少なくとも、鈴木はその境地まで達している。

◆「世界一のチームから清水へ来た元ブラジル代表」>>

 後半、清水は横浜FCのシステム変更などでプレッシングが後手に回り、反撃を受ける形で1点を返され、守勢に回った。連戦連敗だった記憶によるものなのか。リズムが悪くなると、突如として自信を失ったようにボール回しにもミスが出て、いたずらに相手に渡していた。

 しかし、守備に立ち戻った戦い方は最後まで粘り強さを見せたとも言える。

「(前半に)追加点を奪えてよかったです。後半は勢いに押されて受け身になってしまいましたが、焦ることはなく、自分たちのサッカーができました。強いて言えば、せっかく奪ったボールを相手に渡していたので、そこでつないで攻撃をやり切ることができれば......。ただ、私が監督になってパーフェクト(と言えるよう)な試合だったと思います」(清水・平岡監督)

 サッカーの世界では、攻撃的にすることが必ずしも攻撃を活性化するとは限らない。守備の土台を作ったセレッソ大阪は上位に食い込み、坂元達裕のようなアタッカーを輩出し、清武弘嗣を蘇らせた。いい守備はいい攻撃を生み出すのだ。

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