中村憲剛・独占インタビュー。「引退発表した今だから話せること」 (4ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 そのなかで、いわゆる自分っぽさが戻ってきたという周りからの感想は、自分としても、とてもうれしい。それを自分は体現しなければいけない立場でもありますし、そう言ってもらえることで、自分がトライしていることは間違ってないと思うこともできる。

 別に、試合に出るだけならば、今シーズンのレギュレーションを考えても、自分より年齢の若い選手を起用すればいいわけですから。自分がいる意味というものを、ちゃんとプレゼンしなければいけない」

 試合に出場するようになり、試合後に身体が感じるリバウンドも含めて、すべてをうれしそうに話していたことも、今となってみれば納得する。そのすべては、サッカー選手としていられる喜びや充実感を楽しんでもいたのである。

「だから、復帰した時に自分の目、見ている景色が変わっていなかったことにはホッとしましたね。むしろ、ケガする前よりも、あらゆる意味で視野が広がっている。だから、今まで以上にサッカーを楽しめている自分がいるんです。

 でも、それはたぶん、限りがあるからなんです。この時間を楽しもうという精神状態から来ているものだと思いますし、復帰したことで、また別の中村憲剛になっていると思います」

 我々は今、最後でありながら、新しい中村憲剛を見ているし、見られてもいる。それはまさに、彼の集大成と言えるのかもしれない。

(後編につづく)

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