Jリーグ月間MVP独自ランキング。三笘薫はルーキーの枠に収まらない

  • photo by Sano Miki

田中碧の戦術的センスは秀抜
小宮良之氏(スポーツライター)

1位 田中碧(川崎フロンターレ)
2位 マテウス(名古屋グランパス)
3位 三笘薫(川崎フロンターレ)
4位 ランゲラック(名古屋グランパス)
5位 三竿健斗(鹿島アントラーズ)

 首位を独走する川崎のサッカーは、頭一つ抜けている。相当に研究されているはずだが、入れ替わりで選手が台頭。10月に入っても、ペースは落ちていない。1チームで、ほぼリーグベストイレブンが構成できる。

 なかでも、田中碧の戦術的センスは秀抜と言える。守備ではアンカーの守田英正と自然にカバーを行ない、数的不利をつくらず、中央の危険なコースを封鎖し、そして長いボールに対し、ヘディングで跳ね返せる強さ(この部分が弱点になって、世界に通じない日本人MFは少なくない)も持つ。

 一方、攻撃ではプレースピードを上げられるパスを武器に、ゴールに近づいても技術が落ちない。名古屋戦は前半30分過ぎ、高速パスの渦をつくったあと、エリア内で落ち着いたフィニッシュを見せた。セットプレーのキッカーとしても非凡。今シーズン、リーグのベストMFだろう。

 マテウスは、名古屋の攻撃のジョーカーになっている。左利きで、独特の間合いを持つ。コンビネーションも使えるが、ひとりでゴールに持ち込める力もある。一気に裏返せるアタッカー。10月は4得点を記録し、好調のチームをけん引した。

 三笘薫は、今シーズンの「新人賞」で決まりだろう。交代出場での切れ味は、コロナ禍でのリーグを彩っている。すでに各チームにマークされているはずだが、10月だけでも3得点。まだまだ守備では課題があるものの、それを凌駕する攻撃のインパクトを残している。ドリブラーなのだが、ドリブルへの執着はなく、ゴールに直結しているのが特長だろう。

 ランゲラックは開幕以来、抜群のゴールキーピングを見せている。名古屋は1-0での勝利が多い(10月も3度)が、その点、守護神の存在が大きい。もっとも、チームとして守備が整備されていることが、ランゲラックの幸運と言えるか。マッシモ・フィッカデンティ監督の戦略もあるが、センターバック(CB)中谷進之介、丸山祐市、MF米本拓司が守備の防壁になっている。

 三竿健斗は、鹿島らしさを感じるMF。勝利に対して見せる気迫は空回りすることもあるが、多くの場合、チームの攻守を旋回させている。序盤戦、不調だったチームを立ち直らせたのは、その勝者のメンタリティによるものだろう。

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