大分が見せる戦力差で劣るチームの正しい姿。大敗にも悲観の必要なし (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yosshiyuki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

「ディフェンスの駆け引きはうまくやれていました。後半に入って、どっちが先制点をとっても、おかしくはない状況だったんですが......」(大分・野村直輝)

 大分は先制点を奪われて苦しくなったものの、その後も機会をうかがって戦っていた。

 しかし、天野純にインサイドへのパスを通され、オナイウに危ういシュートを打たれるなど、伏線はあった。先制点から10分後、ジュニオール・サントスに二列目を完全に抜かれ、センターバックが詰め切れず、猶予を与え、ゴール右上隅に技巧的なシュートを突き刺された。

「2失点目が痛かった。1-0だったら、粘り強く戦って、跳ね返すプラン、余地もあったが。2-0にされて、ゴールに行くという意識が強すぎ、焦りが出た。(攻守が)バラバラになってしまった」(片野坂監督)

 大分は戦略的に横浜FMを引き込み、ハイラインの裏を狙っていた。しかしリベロに入った喜田拓也に、その作戦をことごとく消されてしまった。つながるはずのロングボールはオフサイドにかかったり、下がった喜田に簡単に処理されたりした。そこを上回る策がなく、修正することができなかった。

 組織に乱れが出た結果として、戦力差が浮き彫りになっている。横浜FMの前線は、ジュニオール・サントス、オナイウと大分を脅かすだけの迫力を持っており、後半投入されたのも、エリキ、水沼宏太、エジガル・ジュニオと強力だった。事実、途中交代で投入されたエリキがダメ押しの2得点。アタッカーは個の力量差が明瞭に出るのだ。

 それでも、大分は悲観するような戦いをしていない。

「後半、少しでも間延びすると、前線のブラジル人は強烈だった。ボランチの間、縦パスを通されてしまっていたのは反省点で、そこは締めないと。ただ、悲観する内容ではなかった。前半はうまく相手をはがせていたし、体力を使わせていたので......」(大分・島川俊郎)

 大分は12位のままで、昨シーズンのようには上位に食い込めていない。だが、前線のパワー不足は懸念されるものの、チームとしてポジション的優位を高めており、その回路は整っている。選手に大きな迷いはないだろう。それは確実に成長につながって、右センターバックの岩田智輝のように、進境著しい選手も出てきている。限られた戦力で戦うチームとして、その道筋は正しい。

 10月14日、大分はアンドレス・イニエスタを擁するヴィッセル神戸と戦う。

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