2020.10.07

独自選考Jリーグ月間MVP。エリキ、驚きの覚醒のきっかけは何か

  • photo by Matsuoka Kenzaburo

チームプレーヤーの活躍に注目した

小宮良之氏(スポーツライター)

1位 アンドレス・イニエスタ(神戸)
2位 エリキ(横浜F・マリノス)
3位 田中碧(川崎フロンターレ)
4位 水沼宏太(横浜F・マリノス)
5位 大谷秀和(柏レイソル)

 9月は、組織を動かすチームプレーヤーの活躍が目立った。

 オルンガ、ジュニオール・サントス(横浜FM)、三笘薫(川崎)などは爆発力があって、派手な印象だろう。彼らが相手に脅威を与えているのは間違いない。まさにノックアウトできるパンチだ。

 しかし最後に敵を仕留めるには、まずはチームを機能させる必要がある。

 その点、アンドレス・イニエスタは別次元の選手と言える。サガン鳥栖、コンサドーレ札幌、名古屋グランパス戦と、彼がボールを受けるたび、試合の流れが変わった。チームが劣勢になると、彼がボールを運び、チャンスをつくり出し、押し込む。そうして相手を押し返すと、敵陣でボールをつないで、ゴールに迫った。

 コントロール、ビジョン、タイミング、そしてキック、すべてが完璧で模範的。名古屋戦(9月30日)は、ワンツーをエリア外からボレーで叩き込み、神がかっていた。まさにサッカーの化身だ。

 そして横浜FMのエリキは、ジュニオール・サントス、マルコス・ジュニオールのブラジル人選手との呼吸が抜群だった。ほかの選手との調和にも優れ、戦術的に優れたチームプレーヤーの典型だろう。

 力みがなく、常にポジション的優位で技術を使える。巧みにボールを呼び込み、最高のタイミングでスペースに入れる。C大阪戦から6試合連続で得点を記録し、9月だけで8得点と数字も叩き出した。

 田中碧は、9月の試合では、主にアンカーではなくインサイドハーフとして、存在感を見せている。川崎は、ほかに旗手、齋藤学、小林もトップ5に相当したが、今回は田中を選出。

 サンフレッチェ広島戦は積極的な攻め上がりで、先制点はリターンパスから右足で沈め、3点目は右からのクロスに走り込んで決めた。横浜FC戦では、ゴール前で相手選手をコントロールで手玉にとって、右足を振った。スペースの感覚に優れた選手で、守備もうまいが、ラインを越えて攻撃できるセンスも白眉だ。

 水沼宏太は、職人的なクロスが光った。清水エスパルス戦は大車輪の働きで、抜け出した仲川輝人に合わせ、これが相手の退場を誘い、オナイウ阿道にも右足クロスでアシスト。鳥栖戦では、マルコス・ジュニオールに完璧なボールを送って、得点をお膳立てした。

 3-4-3のシステム変更で、右ウイングバックを任されたことによって、不調だったチームを浮上させた。

 大谷秀和は柏の舵取り役。周りの選手を補完することで、力を引き出している。チームとしての安定が、オルンガの爆発の着火になった。ボランチとしてのビジョンは際立ち、予測力が高い。札幌戦の決勝点となったバッグヘッドシュートは象徴的だ。

 齋藤学は、左サイドで一気に定位置をつかんでいる。ポジション争いが激しい川崎で、個性を見せた。広島戦は、切り返しの右足クロスから田中の得点をアシスト。ドリブルの流れを止めず、自然にクロスに入れるだけに、守る側はタイミングを取れない。