「練習が90分で終わるわけないだろ」。ヴェルディ監督が説く根性論 (2ページ目)

  • 会津泰成●文 text by Aizu Yasunari
  • 松岡健三郎●写真 photo by Matsuoka Kenzaburo

 永井自身、効率的なトレーニングを全否定しているわけではない。現役時代からお世話になっている何人かのフィジカルのプロフェッショナル、ドクター等には頻繁に連絡を取って知識を得ている。

 しかし、勝負の世界では、最後は常識を超えた力が必要であることを、永井自身、不屈の魂でチームがひとつになり奇跡を起こした横浜フリューゲルスの天皇杯優勝などで体験もしてきた。それだけに、たとえ否定されたとしても「根性」という言葉に対して譲れない思いがあった。

 日本一厳しい練習と言われた国見高校サッカー部時代。そして、2部練習は当たり前、時には3部練習までしていた国士舘大学時代。永井にとってサッカーはプロ入り前から常に戦いであり、そうしたサッカー人生の歩みも、永井を、「挑戦を阻む壁を壊すには根性論は不可欠」という思いに辿り着かせたのかもしれない。

「根性」という言葉に対しては、指導者の行き過ぎた指導や暴力といったネガティブなイメージを持つ人も少なくないので、誤解のないよう言葉の意味を確認しておきたい。「根性」とは、元々は「根に性を据える」という意味。つまり「物事を諦めず、最後までやり通すたくましい心」のことであり、それがつまり、永井が言う「覚悟」につながった。

「メッシと同じ練習量で、メッシを超える技術を身につけられるかといえば、一生無理。ヨーロッパで、いわゆる世界トップの選手たちのトレーニングは、1日あたり90分以内と言うけど、実際は、試合が終わってすぐに飛行機で移動して、水曜日、自国で代表の試合をして、また戻ってきてクラブで試合をして、というハードな日程の中で動いている。

 なんとなくヨーロッパの真似ごと、集中できる時間を考えて、今はどのチームもサッカーのトレーニングは90分以内とか言う。でも『90分でいいなんて、誰が決めたんだ?』と思う。指導にこだわりがあって、習得させたい技術や戦術、考えがあるならば、『90分で終わるわけがないだろ』というのが自分の考え。まして我々は発展途上のチーム。古い考え方かもしれないけれど、世界のトップ10の国や選手たちよりも練習しなければ差は埋まらない。いくら理論で最先端のことをしても、体に染み込ませるためには、練習量は必要だと思う」

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