施されたら施し返す。浦和育ちの23歳が「恩返し」で横浜FCの完全勝利 (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 最終節、横浜FCが開幕戦のリベンジを果たし、浦和の連覇の夢を絶ったのはサプライズだった。だが、それも実力を反映したというよりも、アジアの戦いで精根尽き果てた手負いの王者に伏兵が一矢報いた、という印象が強い。

 あれから13年が経過し、横浜FCは再びJ1の舞台に戻ってきた。

 もちろん、あの時とは選手も監督も違う。浦和も王者ではなくなった。ただし、その戦力を考えればやはり差を感じざるを得ず、浦和に横浜FCが挑むという構図は大きく変わらないはずだ。7月26日に行なわれた一度目の対戦でも、横浜FCは0−2と完敗を喫している。

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 ところが、である。あの伝説のゴールから13年ぶりに行なわれた埼玉スタジアムでの再戦で、試合を完全にコントロールしたのは、横浜FCだったのだ。

 とりわけ前半の戦いは、圧倒的だった。GKからボールをつなぎ、リズミカルなパスワークで局面を進めると、相手陣内でも素早く連動して守備網をこじ開けていく。16分には前からのプレスで相手のビルドアップのミスを誘い、浦和のアカデミー育ちの松尾佑介が、施された古巣に恩返しの先制点を決めた。

 驚きだったのは、先制後も相手を押し込んだこと。守備がはまらない浦和をあざ笑うかのように、素早くパスを回し、35分にはレアンドロ・ドミンゲスの完璧なお膳立てを受けた松尾が、再びゴールに蹴り込んだ。

 後半は立て直してきた浦和にやや押し込まれる展開となったが、身体を張った守備で隙を与えず、今季2度目となるクリーンシートを達成。スコア的にも、内容的にも、横浜FCの完勝と呼べるゲームだった。

 浦和の不甲斐なさにも助けられたとはいえ、横浜FCは早々に降格が決まった13年前とは、明らかに別の顔を見せている。ラッキーパンチではなく、効果的にジャブを打ち込み、隙を見せた相手を確実にマットに沈めた。

 決してフロックではない、完全勝利である。

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