2020.09.23

最強・川崎フロンターレはなぜ圧倒的にボールを保持できるのか

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

中村憲剛。新・鉄人伝説の始まり>>

 しかし、川崎は相手にマークされていても平然とつなぎきってしまう。

 形ではなく技術で解決してしまっている。この技術の高さが、あらゆるプレーの土台になっているのだ。

 土台をつくったのは、風間八宏前監督の時代だった。風間前監督は「ボールを静止させろ」と選手たちに要求していた。ボールの中心から上の一点を触ればボールは静止する。足を引く必要もない。点に触ることがすべてなので、ボールが体より前でも懐でも同じように静止させられる。

 静止させられれば、逆にボールを動かすことも容易にできる。ボールを意のままに扱える技術と自信があれば、自ずと見えてくる景色は違ってくる。時間の感覚も変わる。相手のプレッシャーはプレッシャーでなくなる。

 ほかのチームなら躊躇する状況でも、川崎の選手たちにはまだ余裕なのだ。だから平然とパスをつないでしまう。通りそうもないパスも通す。簡単に言えば、プレーのレベルが違うということになる。

 しっかりした土台の上に4-3-3という建物を乗せたのは、現在の鬼木達監督である。

 4-3-3はヨーロッパの強豪チームではスタンダードとも言えるシステムだが、Jリーグでは採用するチームがほとんどなかった。4-3-3はざっくり言えば強者のシステムだからだろう。

 ボールを保持して攻め、敵陣からプレスしてボールを奪うのに向いている。バルセロナ、レアル・マドリード、リバプール、マンチェスター・シティ、バイエルンなど、それぞれのリーグで圧倒的な力を持ち、ほかとの格差がはっきりしているから、強者のシステムを採用しやすい。

 一方J1は、毎年終盤まで複数のチームが優勝を争う、力の均衡したリーグだった。強者のサッカーで押し切ろうとするには勇気がいる、むしろそれが蛮勇になりかねないリーグと言える。

 今季、4-3-3を採用するチームが急に増えた。開幕時点では優勝候補とは言えないようなチームでも採用していた。その背景にはビルドアップの進化がある。昨季から、形状変化を使い、GKもつなぎに参加させて、自陣からパスをつなごうとする傾向が出ていた。