青山敏弘「うちの若いの、すごいでしょ」。
若手を称賛も道を譲る気なし

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 9月19日に行われた柏レイソル戦でも、当然のようにスタメン出場を果たし、安定感抜群のプレーで敵地での勝ち点1獲得に貢献。得意のダイレクトパスで攻撃のスイッチを入れ、的確な位置取りで相手の攻撃を封じた。走行距離11.636kmはチームトップの数値だった。

 運動量とロングフィードは、青山という選手の最大の魅力だろう。とりわけ、一気に局面を変えるフィードは、かつて佐藤寿人とホットラインをつなぎ、多くの歓喜を生み出してきた。

 もっとも最大のパートナーを失った近年では、ほれぼれするような美しいフィードを見る機会が減少した。だが、それでも俯瞰するような視野でピッチ全体を見渡し、味方の足もとやスペースに力強いインサイドキックを打ち込んでいくパスワークは、機械のような精密さを保っている。

 柏戦で際立ったのは、状況判断とプレー精度の高さだ。互いにカウンターの応酬のようなハイテンションの展開となるなか、後方でボールをさばく青山は、縦だけでなくサイドチェンジを多用し、スペースを広げる配球を心がけていた。

 攻め急ぎが見られればボールを落ち着かせ、隙を見出せば一気に縦パスを打ち込んでいく。先制点の場面でも、青山の何気ない縦パスが柏の守備網を打ち破った。

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 浅野と森島の2シャドーに自由を与え、後方でボールをさばきながらボランチでコンビを組む川辺駿を前に押しやり、ビルドアップでは荒木のサポートに回る。ゴールに直結する役割をこなしていた数年前とはスタイルを変え、今の青山はひとつの歯車としてチームを回していく"黒子役"に徹しているように感じられた。

 そこには、若手に対する期待感があるからだろう。

「うちの若いの、すごいでしょ」

 昨季、ルーキーながらスタメンを勝ち取った荒木について聞くと、うれしそうに話していたのを覚えている。まだ新型コロナウイルスの影響による取材規制がなかった今季のルヴァンカップ開幕戦で話した時も、途中出場からインパクトを放った浅野や藤井を"愛のある表現"で期待感を表していた。

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