カズの存在が横浜FCの勝因になっている。背中で語る53歳の美学 (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by Getty Images

 最後に聞いた質問も、なんとも失礼なものだった。

「この年齢になってもサッカーを続けられる理由は?」

 捉え方によっては、「なんでサッカーを辞めないんですか?」と聞こえなくもない。しかも、新たなシーズンに向けてコンディションを高めている時期に、だ。

 これまでにも、いろんなメディアから聞かれてきた類(たぐい)の質問でもあっただろう。タイミング的にも、内容的にも、「しょうもないことを聞く記者だな」と思われたかもしれなかった。それでもカズは、どこまでも神対応だった。

「やっぱり、サッカーが好きだから、ですかね」

 それがすべてである。コンディションさえ保つことができれば、好きなことをやり続ける。それがカズの生き様であり、答えだった。

 その年、横浜FCFはシーズン途中から指揮を執った高木琢也のもとで快進撃を続け、J2優勝を達成。カズも39試合に出場し、6得点を挙げる活躍を見せ、J1昇格に大きく貢献した。

 翌年、40歳となったカズはJ1でも衰え知らずのプレーを見せ、24試合に出場し、3得点をマーク。チームは1年でのJ2降格となったが、カズ自身はシーズン最終戦で浦和レッズの連覇の夢を断つ決勝アシストを記録した。これがカズにとって、現時点でのJ1最後の試合となっている。

 そして迎えた2020年。13年ぶりにJ1に復帰した横浜FCの11番は、いまだカズの背中にある。53歳にして現役を、しかもトップリーグで続けているのは、奇跡というほかないだろう。

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 ここまでルヴァンカップ2試合に出場しているものの、リーグ戦での出番はなし。ところが9月13日に行なわれた名古屋グランパス戦で、カズは今季初めてリーグ戦のベンチ入りを果たしたのだ。

 ピッチに立てば、もちろんJ1最年長記録となる。世界的に見てもギネス級の出来事だろう。試合中、横浜FCのコーチが交代カードを持って第4の主審のところに走るたびに客席は色めきだったが、結局カズの出番は最後まで訪れなかった。

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