Jを席巻する韓国人GKに代わって、若手日本人GKが台頭し始めた理由 (2ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 そのひとつの要因として、「GKプロジェクトの成果が出ている」と指摘するのは、サッカー解説者の山本昌邦だ。

 GKプロジェクトとは、世界と対等に戦うためには優れたGKの養成が急務との考えから、日本サッカー協会が1999年にスタートさせたものだ。U-15、U-18を対象にナショナルGKキャンプを毎年開催するなど、強化を続けてきた。前出の梅田や小畑などは、このキャンプの参加経験者である。

 GKは育成年代に専門の指導者が少なく、日本サッカーにとってアキレス腱にもなりかねないポジションだったが、ようやく地道な活動の成果が現れてきたというわけだ。

 また、カテゴリーを問わず、日本にパスをつないで攻撃を組み立てるポゼッション志向のチームが増えたことも、若いGKの台頭を後押しした。山本が続ける。

「例えば、韓国人GKはスーパーセーブが多いし、キックの飛距離も出る。そこは確かにスゴい。でも、日本の若い選手たちは、下(ユース年代)からビルドアップ重視のサッカーをやってきているので、パスワークのスキルがある。左右両足を使えるし、その技術は彼らのほうがあると思う」

 そこに加えて、昨年のルール変更が、さらに流れを加速させた。

 以前のルールでは、ゴールキックは必ずペナルティーエリア外の選手が受ける必要があった。だが、昨年のルール変更で、ペナルティーエリア内の選手にパスすることもできるようになったのである。

 つまり、ゴールキックからパスをつなごうとするときに、相手のプレッシャーを受けにくくなり、攻撃を組み立てやすくなったのだ。Jリーグの試合を見ていても、ゴールキックの際にGKのすぐ脇にDFが立ち、短くパスをつなぐケースが多くなっている。山本が語る。

「ルールが変わったことで、ゴールキックからでも数的有利を作ってビルドアップしていこうぜ、という方向へ世界のサッカーが動いている」

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