2020.09.07

やられたらやり返す。
川崎の王者攻略の狙いはどこにあったのか

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 縦にも横にもコンパクトな横浜FMの守備陣形は、ボール付近に人が密集するため、それ以外には大きなスペースが存在する。ラインの背後はオフサイドやGKの飛び出しでカバーできるものの、横の揺さぶりにはもろさを露呈。素早いサイドチェンジについて行けない場面が目立った。

「右にしても、左にしても、コンパクトにしてくるので、スペースを使う共通意識はありました」

 川崎の鬼木達監督が言うように、サイドへの揺さぶりがハイライン攻略の最大の手段となったのだ。

 とりわけ、カギを握ったのは左サイドの三笘薫だった。

 右で起点を作り、一気に左へと展開。三笘がスペースに飛び出し、ハイラインをかいくぐった。33分に生まれた同点ゴールも、狙いどおりの形から。この大卒ルーキーの突破力と決定力の高さも称えられるべきだが、相手の弱点を突くチームとしての共通意識が導いたゴールだった。

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 この1点で、試合の流れはガラリと変わった。

 川崎は後半立ち上がりから旗手怜央と小林悠を投入し前線の機動力を高めると、今度は横浜FMのお株を奪うかのようなハイプレッシャーを仕掛け、相手を押し込んでいく。48分には高い位置でのボール奪取から家長昭博が逆転ゴール。直後にも再び三笘が決めて、試合の趨勢を決した。

 ノーガードの打ち合いを期待した身からすれば、やや物足りなさも残ったが、川崎の試合巧者ぶりは目を見張るものがあった。パスワークが封じ込まれれば、相手の弱点を突く。ここぞという場面では選手交代で活力を注入し、一気呵成に攻め立てていく。

 立ち上がりにこそ課題を残したが、悪い時間帯を耐えしのぎ、次第にペースを取り戻していく様は、懐深く相手の立ち合いを受け止め、じわりじわりと圧をかけ、いつのまにか寄り切ってしまう「横綱相撲」を想起させた。

 一方の横浜FMは、対抗策を持ち合わせていなかった。立ち上がり15分のサッカーを続けることができれば問題はなかったが、一度流れを失うと立て直すことができなかった。なかでも、右サイドを何度も狙われながら修正できなかったことが致命傷となった。