イニエスタ不在のパズルはハマるか。神戸が目指す「依存しない」着地点 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●写真 photo by fujita Masato

 再開後は目覚ましいプレーを見せていたイニエスタだが、疲労の蓄積もあって7月末からトーンダウン。8月19日の第11節、柏レイソル戦で前半途中にケガで交代して以降、リーグ戦は欠場が続いている。ルヴァンの川崎戦、イニエスタは終盤に途中出場したが、今節は再びメンバーから外れることになった。

 日々のトレーニングから、イニエスタはチームメイトに正しいポジション、正しいタイミングを伝えている。それによって、神戸の選手たちはプレーを成功させ、自信を得られるようになった。その連鎖が神戸の活力だ。

 おかげで、古橋亨梧はJリーグ全体を見渡しても傑出したアタッカーになっている。湘南戦は、連戦でコンディションが万全ではないのか、いつもの切れはなかった。しかし、下がって受けてのプレーは図抜けていた。酒井高徳の同点弾につながったポストワークもそうだが、パスを引き出し、受けて叩く質は高い。それはイニエスタ、あるいはダビド・ビジャとプレーを重ねることで身につけた感覚だろう。

「アンドレス(イニエスタ)は、ボールを運ぶ力はたぶん世界一の選手で。彼が運ぶだけで、どんどん景色が変わっていく。食いつかせて、パスを出して、自分が動くことで周りを動かし、スペースも作り出せる」

 湘南戦、3バックの中央で先発したDF渡部博文はそう説明している。

「ただ、試合を重ねると、相手も相当、アンドレスには警戒するようになっていますね。そこは敵も狙っている感じがあるので、自分としては、アンドレスをあえて飛ばすようなパスを狙うことも必要だと思っています。いつもいいところにいる選手なので、パスを出すのは簡単なんですけどね」

 イニエスタは絶対的存在だろう。しかし、そこに依存しないバランス感覚も必要になる。その着地点を見つけることで、チームは真の強さを得られるのかもしれない。

「(いつもは左サイドバックの)酒井を右サイドで使ったのは、左サイドの初瀬(亮)がいい練習を見せていたのと、(いつもは右サイドバックでレギュラーの)西(大伍)よりも酒井は体力があるので」

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