清武弘嗣が輝きを取り戻した。スペイン人指揮官が絶賛した能力とは (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • ヤナガワゴー!●撮影 photo by Yanagawa Go

 リージョはそう言って、神戸監督就任時に、クラブに対して清武獲得を打診したことを明かしていた。

 ポテンシャルだけで見れば、清武はJリーグの日本人アタッカーの中では群を抜いている。2014年ブラジルワールドカップ日本代表のメンバーであり、その後は代表の主力になっているはずだった。しかし、2017年2月に不遇をかこったセビージャからセレッソに移籍してからは、代表での出場は1試合にとどまる。

 その理由は、主に故障だろう。代表に招集されてもケガで離脱するなど、しばらくは断続的なプレーにならざるを得ず、調子も上がらなかった。そして2018年ロシアワールドカップ後は、久保建英(ビジャレアル)、南野拓実(リバプール)など若手が目覚ましい台頭を見せた。

 しかし、今の清武は円熟味を感じさせる。

 セレッソでは、ミゲル・アンヘル・ロティーナ監督がソリッドなチームを作り、選手それぞれの仕事が明確化されている。それによって、清武も攻守に無理がなく、ケガなしで効率的プレーを見せるようになった。攻撃では、中に入ってトップ下のように機能し、周りの選手を動かし、相手ラインを破る。右サイドの坂元の成長は目覚ましいが、清武が誘発しているところもあるだろう。

 そして欧州の最前線で腕を振るってきた選手だけに、今も見せ場の猛々しさは瞠目に値する。

 後半13分、自陣のMF藤田直之からセンターラインを越えるスルーパスを、清武は疾走しながら受けている。そのままの推進力からドリブルでゴール前に迫ると、キックフェイントでひとりを切れ味鋭くかわし、左に入る。ペナルティエリア内で3人に囲まれながらのキックはブロックされたものの、敵をなぎ倒す勢いがあった。

 そのこぼれ球を、奥埜、ブルーノ・メンデスとつなぎ、チームは決勝点としている。

 後半28分、清武は柿谷曜一朗と交代でピッチを退いている。今シーズン、12試合先発しているが、フル出場はなく、後半25~30分での交代が続く。猛暑の連戦の中、それが清武の力を最大限に引き出す"時間制限"なのだろう。しかし少なくとも、今の清武に脆さは感じられない。そのプレーは力強く、味方を生かし、自らも輝いている。

 セレッソは9月2日にルヴァンカップ準々決勝で柏レイソルと激突する予定で、10月まで週2ペースの試合を戦う。タイトル争いをするセレッソにあって、清武は唯一無二の存在だ。

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