内田篤人のラストゲームで見た切ない場面。限界までやり切り有終の美 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 木鋪虎雄●撮影 photo by Kishiku Torao

 まずは、タッチライン際のオーバーラップから精度の高いクロス。かと思えば、クロスをチラつかせながら、ニアゾーンへグラウンダーのパス。相手の陣形を見ながら、次々に最適なプレーを選択する頭脳は、少々試合から遠ざかったところで、まったく錆びついてはいなかった。

 試合終盤には、ロングボール1本に合わせてDFラインの裏を取る、実に内田らしいフリーランニングも見せている。

 0-1で迎えた後半ロスタイム。土壇場で追いつき、1-1の引き分けに持ち込んだDF犬飼智也の同点ゴールを呼び込んだのも、内田の正確なアーリークロスがきっかけだった。内田のプレー一つひとつが、最後まで彼らしさに溢れていた。

 もちろんそこには、相手のカウンターを阻止するため、激しく当たりにいってファールをもらい、現役最後のイエローカードを受けたことも含まれている。

 もったいない。やはり、そう思わずにはいられない。

 とはいえ、その一方で、彼はサッカー選手であり続けるために、こんなにも無理をしていたのかと、切なくなるような場面もまた多かった。

 ずっと痛めていた右ヒザにテーピングが施されているのは、もはや見慣れた姿ではある。だが、この試合の内田は、後半なかばの給水タイムを利用して、テーピングをし直してもらっていた。

 白いテープでがっちりと固められた右ヒザは、カシマスタジアムの2階記者席からでも、太くなって見えた。それほど再処置は緊急、かつ厳重なものだったのだろう。

 ヒザの痛みが酷くなっていたのか、試合が進むにつれ、内田は味方の攻撃に合わせて、押し上げられないこともあった。また、逆に相手ゴール前まで攻め上がったあとには、素早く自陣に戻れないこともあった。最後まで内田らしいプレーが見られたことにウソはないが、相当な痛みを感じているのだろうことは、随所に想像できた。

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