イニエスタ不在でも勝つ。神戸は過密日程を戦い抜く手応えを得た (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

「最近はメンバーにも入れずに悔しい気持ちだった」という初瀬は、「何も失うものはないという気持ちでやってやろうと思っていた。それがアシストという結果につながったと思う」と、自らのパフォーマンスを振り返った。

 ゴールを決めた小川も、これまでは主に途中出場が多かった。しかし、立ち上がりからエンジン全開でピッチを疾走し、得点場面のみならずカウンターの先鋒を担い、守備の局面でも素早く戻って相手に圧力をかけ続けた。

 小川はフル出場を果たし、走行距離はチームトップを記録。スプリント回数は驚異の40回を数えた。この機動力こそが、神戸に流れを呼び込んだ要因だろう。

 この日の神戸の攻撃には、何よりスピードがあった。ボールを無駄に下げず、縦への意識が高かった。唯一、前節から続いてスタメン出場を果たしたセルジ・サンペールの配球も冴えわたり、効果的なサイドチェンジを交えながら、前への意識を貫いた。

 イニエスタがいれば、またリズムが違ったかもしれない。キープ力が高い分、時間は生まれ、行き詰まればボールを下げて、攻撃を再構築することもできる。

 しかし、収まりどころがなかったこの日は、中途半端な位置でボールを失うよりも、シンプルにゴールに向かい、攻撃を完結させようという意識が高かったように思う。もちろんイニエスタがいれば、超絶技巧で局面を打開する"魔法"が期待できるが、不在のなかでベストを尽くした。

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 小川のゴールで先制しながらトーマス・デンの衝撃弾で追いつかれ、後半はビルドアップのミスを突かれるなど、危険なシーンもいくつかあった。それでも山口蛍、ドウグラス、酒井高徳と主軸が投入されると次第に流れを取り戻し、82分には山口の一撃が飛び出し、4試合ぶりの勝利を手にしている。

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