昨季の二の舞か、それとも...。今季の名古屋グランパスは本当に強いのか (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 ところが、第8節以降は1勝2敗と黒星が先行。しかも、勝つときは6-2と大勝する一方で、2敗はいずれも0-1。極端に振り幅が大きいスコアは少なからず不安を高め、順位のうえでは5位(第10節終了現在)につけてはいるものの、昨季を想起させる状況となっている。

 名古屋がピッチ上で展開するサッカーは、よくも悪くも常識的だ。基本的にはリアクションではなく、アクション――自分たちでボールを保持し、主体的にゲームを進めようとはしているが、それほどのこだわりがあるわけではない。負けている試合では、躊躇なくパワープレーも用いる。

 すでにJリーグでの経験も豊富なイタリア人監督が、まずは守備のバランスを重視していることは、試合のなかからうかがえる。事実、失点は少なく、1試合平均1点以下。その点では、昨季のように突如成績が急降下することはないのかもしれない。

 だが、常識的なサッカーは、裏を返せば、今季の名古屋は強い、と確信を与えてくれるインパクトもない。

 0-1で敗れた第10節FC東京戦にしても、試合後、フィッカデンティ監督は、引いて守るだけの相手へ、ファールを見逃すレフリーへ、さらには水を撒きすぎてぬかるんだピッチへ、次々に(あくまでも本人の主観に基づく)不満を並べていた。

 惜敗直後のことだけに、気持ちはわかる。しかしながら、客観的に試合を見れば、決してFC東京がなりふり構わず守りを固めていたわけではなく、無得点の主たる要因は、名古屋の攻撃の単調さにあった(その点については、指揮官も「ボールを動かすスピードが遅かった」と認めている)。

 名古屋は、ブラジル人選手を中心に比較的個人能力の高い選手を擁しており、いわば、個々の"アドリブ"で得点できる部分がある。これまで全試合に先発出場している選手が7人もいることからもわかるように、メンバーを固定することでコンビネーションの練度を高めたいという狙いもあるのかもしれない。

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