「イニエスタが合わせてくれる」。より強固になった同僚との信頼関係 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by AFP/AFLO

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「アンドレスには、練習から当たることすらできない。どうやったら、そんなプレーができるのか。よく見るようになったし、考えるようになった」

 チームメイトたちは口をそろえるが、それは至高のサッカーレッスンだ。

 イニエスタの影響を一番受けているのは、昨年、日本代表にもデビューしたFW古橋亨梧だろう。

 古橋は、持ち前のスピードと裏を取る感覚の鋭さが、イニエスタのプレーによって研ぎ澄まされている。正しいタイミング、正しいコース、正しい強度でパスが出てくる反復によって、シューターとしての精度が目に見えて上がってきた。ほとんど不可能な状況でも、一瞬で裏を取ってボールが出てくるだけに、ひらめきまで得られるのだ。

「アンドレスは絶対にボールを失わないから、信じて全力で走れる」

 昔、バルセロナのFWとして活躍したサミュエル・エトーはそう語っていた。その信頼関係によって、ゴールを量産していた。

 今もイニエスタと周りの選手の関係性は変わらない。FWだけでなく、ディフェンスは安心してボールを預けられる。中盤の選手は積極的に連携し、次のプレーでアドバンテージを取れるのだ。

<イニエスタとプレーすることで、誰もがサッカーがうまくなる>

 それはもはやひとつの真理だ。

「アンドレスがどうしてボールを持ち運ぶのか、それが少しだけわかってきました」

 渡部は言う。

「運ぶことで、周りの選手のマークが外れるんです。それで周りはボールを受けられる。だから他の攻撃的選手のように、アンドレスは『動けよ』みたいなストレスを周りにぶつけない。自分を動かして、周りを動かすんですよ。おかげで自分も、センターバックとして勇気を出して前に運ぶことにチャレンジできるようになりました。今までとは違った景色が広がってきていますね」

 8月8日、ノエビアスタジアム神戸。J1リーグ第9節、9位の神戸は15位のベガルタ仙台を迎える。勝てば一気に上位争いに食い込めるはずだ。

 イニエスタは、次にどんな魔術を見せるのか。 

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