清水エスパルスの魅力ある冒険。信念を貫いて王者のスタイルに挑む (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 1−1で引き分けた第8節の浦和レッズ戦後、キャプテンのMF竹内涼はこんなことを話している。

「(長期中断が開け、J1が)再開する前から、みんなポジティブに自分たちのサッカーをし続けたいと思って、練習からやってきた。最初、結果が出ない状況が続いたが、投げ出さないで続けていることが少しずつ結果につながっている。やっていることは間違っていない。必ず勝ちにつながるという思いは全員が持っていると思う」

 新たな取り組みはまだ始まったばかりだ。清水は目指すサッカーを実現するための、攻守両面での最適なバランスをまだ見つけられていない。

 すなわち、選手それぞれがピッチ上のどこに立ってパスを回せば、効果的にボールを動かせるのか。あるいは、ボールを失ったとしてもすぐに奪い返せるのか、における最適なバランスである。

「なるべく相手の陣地でプレーしたい。ペナルティーエリアに入る回数を増やしたい。決定的なチャンスを増やしたい。僕たちがやりたいのは、相手がずっとゴールを守らないといけない状況にすること」

 竹内は理想のサッカーをそう言葉にするが、そのためには、どんなに流麗な攻撃ができたとしても、単発では意味がない。相手が対応に苦労する攻撃を何度も続け、ボールを失ってもすぐに奪い返しに移る。そのための立ち位置を、チーム全員がバランスよく取らなければならないのだ。

 もちろん、それを理解し、ピッチ上で実践するのは容易いことではない。清水が進む道の先駆者、横浜FMにしても、一昨季は相当に苦しんだ(J1リーグ12位)。

 目指すサッカーがハマり、鮮やかに勝利する試合がある一方で、カウンターを次々に浴び、大敗を喫する試合もあった。理想と現実の狭間で苦しむ声を、選手たちの口から聞くことも少なくなかった。

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