中村航輔がビッグセーブ連発。柏の守護神争いはJリーグトップレベル (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by AFLO


 ところが2019年、大型補強を進める神戸において、外国籍枠の影響から出場機会を失うと、同年夏に古巣の蔚山現代に復帰。そして今年、神戸時代に師事したネルシーニョ監督のもとでのプレーを求め、柏への加入を決断。負傷した中村を差し置いて、開幕戦からピッチに立っていた。

 中村にとっては、越えなければいけない壁である。2016年にリオ五輪に出場し、2018年にはロシアワールドカップのメンバーにも選ばれた。柏で不動の地位を築いていたものの、このライバルの加入が中村に大きな危機感を生み出していることは想像に難くない。

「僕自身が評価する立場ではないと思っていますが、誰もが認める選手であって、Jリーグでもベストのうちに入る選手。GKのポジションはひとつしかないですが、同じレイソルのユニフォームを着て戦う大事な仲間だと思っています」

 中村自身は、両者のライバル関係をあおりたい周囲の声を冷静に制したが、日韓の代表GKがひとつのポジションを奪い合う柏の守護神争いは、間違いなくJリーグで最もハイレベルなものである。

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 後塵を拝していた中村だったが、柏は第2節から3連敗。第3節の横浜FC戦、第4節の川崎フロンターレ戦と、2試合連続で3失点を喫していた。

 もちろん、すべての責任がキム・スンギュにあるわけではない。だが、流れを変えたいネルシーニョ監督は、その役割を"出場機会に飢えていた選手"に託した。中村も前節の湘南戦でようやく、今季初出場の機会を手にしたのだった。

 湘南戦では2失点を喫したものの、連敗を食い止める勝利に貢献。浦和戦では今季初の完封勝利を実現している。ひげを蓄え、すごみを増した風貌で、柏のゴール前で圧倒的な存在感を放ったのだ。

 32分に先制したあともピンチが続いたが、中村の集中力が途切れることはなかった。前半終了間際、あとは押し込むだけという関根貴大のシュートを間一髪で防ぐと、後半にも至近距離からの伊藤涼太郎のボレーをセーブ。「攻略するのはもはや不可能」。そう思わせるほどのハイパフォーマンスだった。

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