新戦力の躍動でF・マリノス初勝利。
だが昨季のリズムはまだない

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

 2019シーズン、横浜F・マリノスは画期的なサッカースタイルで優勝をさらった。ハイラインを保って主導権を握り、サイドバックがMFのようにプレーメイクに厚みを加える。マルコス・ジュニオールがトップ下で変幻の動きを見せ、仲川輝人がサイドから驀進。破壊力抜群の攻撃は、シーズン最多得点を誇った。

「その上で、徹底的に敵チームをスカウティングし、弱点を攻めてきた」

 対戦相手たちが呆然と振り返ったように、当たるべからざる勢いだった。ひとつの時代を彩ったと言える。しかし、王者は王座を狙われる立場だ。

「自分たちはチャンピオンチームで、当然、相手は対策を立ててくる。簡単な試合はない。ミスを修正して、やり続けるだけだ」

 2020シーズンの開幕戦、ガンバ大阪を圧倒的に攻めながら1-2で敗れた後、ブラジル人センターバックのチアゴ・マルチンスはそう洩らしていた。

 そしてコロナ禍による中断後の再開戦、浦和レッズ戦もスコアレスドローで勝てなかった。攻め続けたものの、ゴールを仕留められない。王者であるがゆえ、2試合勝ち星がないだけで疑問視される。

湘南ベルマーレ戦で2得点を決めた天野純(横浜F・マリノス)湘南ベルマーレ戦で2得点を決めた天野純(横浜F・マリノス) しかしこの日、王者は片目を開けた。

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