2020.06.10

年齢詐称していたエメルソン。
来日しなければ選手生命が終わっていた

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 出生証明書の顛末を先にお話ししてしまうと、エメルソンが日本をあとにした2006年、この偽造は公になってしまう。ブラジルに一時帰国した際、彼はブラジル警察に拘束された。結局、友人の弁護士たちの力添えで釈放されたが、彼は今でも日本行きが自分を救ったと信じている。なぜなら、日本に行く前に発覚していたら、彼の選手生命はそこで終わっていただろうから。

 サッカーは彼を救い、英雄にしてくれた。ファベーラの多くの少年たちがドラックの売人になったり、薬におぼれたりしていくなかで、サッカーがあったからこそ彼はそこから抜け出すことができた。絶望するほどの貧しさと、サッカーですべてが変わった喜びは、実際にそれを体験した者にしかわからないだろう。

 エメルソンとは何度か日本の話をしたことがあるが、彼がまず驚いたことは日本人の律義さだったという。

「コンサドーレは契約が成立すると、すぐに俺の口座に金を振り込んでくれたんだ」

 日本人の皆さんには、何がそんなに驚くことなのかと不思議に思うかもしれないが、常に給料の支払いが遅れがちなブラジル人にとって、これは奇跡に近いことなのである。そしてもうひとつ彼が驚いたのは――雪だった。