2020.05.16

横浜フリューゲルスの天皇杯優勝。
不安と悲しみの中で戦い抜いた奇跡

  • 渡辺達也●文 text by Watanabe Tatsuya
  • 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 約1週間のオフを経て11月末、チームは天皇杯に向けて再スタートを切る。だが、このころになると、スポーツ紙にはチラホラと、ほかのチームからオファーがある選手の名前が載るようになっていた。オファーがある選手もいれば、オファーがない選手もいる。チームの雰囲気は最悪だった。

「なんでこんな練習しなければいけないんだよ」と、あからさまに口にする選手も出てきた。そんな殺伐とした雰囲気の中で練習は再開した。
 
 12月2日。調印の際は事前にサポーターや選手に伝えるという約束を破り、「合併調印」が発表された。これで白紙撤回はなくなり、横浜フリューゲルスは消滅することが決まった。

 一時は選手たちの間に、「レギュラーの選手は何とか次のチームが決まるだろう。だったら、今まで試合に出ていない選手を天皇杯に出してアピールの場にしてもいいのでは」という考えもあったという。しかし、ベンチにも入れない若手選手が「僕らは試合にでなくてもいい。ベストメンバーで戦って優勝してほしい」と言う。