闘将ドゥンガはコロナ禍のブラジルで45トンの食糧を配っていた

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

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あのブラジル人Jリーガーはいま
第3回ドゥンガ(前編)>>後編を読む

優勝したアメリカW杯でブラジルのキャプテンを務めたドゥンガ photo by YamazoeToshio優勝したアメリカW杯でブラジルのキャプテンを務めたドゥンガ photo by YamazoeToshio ここ3週間、ドゥンガは止まることがなかった。コロナ禍で仕事を失い、その日の食事にも困っている貧しい人々のため、休みなく奔走した。それは困難なことだったが、これまでの人生同様、ドゥンガはその障害を乗り越えた。20日間で、彼は45トンの食糧......野菜、米、パン、果物、豆などを人々のもとに届けた。

 4月26日、すべてをやり遂げたドゥンガは久しぶりに家でゆっくりとした時を過ごしていた。彼が家にいるのにはもうひとつ理由がある。この日、ブラジルのグローボTVが、かつての名勝負、1994年アメリカW杯決勝、ブラジル対イタリアを再放送していたからだ。

 ドゥンガだけでなく、多くのブラジル人がこの日、テレビの前に陣取っていた。なにしろ24年ぶりにW杯に優勝したあの時の喜びは、当時を知るブラジル人にとっては格別なものだった。今、不安な日々を過ごす人々にも大きな勇気を与えるはずだ。そしてその主役のひとりこそ、ドゥンガだった。

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