2020.05.12

昨季の横浜F・マリノスは「史上最強」。
的確な補強戦略で常識を覆した

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 ただし、勝利の確率を高めるためには、ボールポゼッションは、ボールを失った瞬間に、素早く、しかもできるだけ高い位置で、奪い返すこととセットでなければならない。

 その点において、横浜FMのサッカーは、現代サッカーにおけるひとつの理想形だった。従来のJリーグとは別次元のサッカーが展開された、とすら言える。

 とはいえ、ピッチ上でどんなサッカーが繰り広げられたかについては、改めて語る必要もないのだろう。

 何せ昨季の話である。誰の記憶にもまだ新しいはずだ。

 そこで、少し視点を変えるなら、昨季の横浜FMを最強に推す理由は、ピッチ外にもあるとつけ加えたい。

 一般的に言って、リーグ戦で優勝するチームというのは、メンバーが大きく入れ替わらないものだ。多くの負傷者を出すことなく、主力選手がシーズンを通してプレーするなかで、戦術的にも熟成されていく。

 ところが、昨季の横浜FMは、そんな常識から外れたチームだった。

 たとえば、昨季J1開幕戦と最終戦の先発メンバーを比較すると、その両方に名を連ねていたのは5人だけ。開幕当初は主力だったMF天野純、MF三好康児は、いずれも海外移籍で夏にチームを離れ、DF高野遼、FWエジガル・ジュニオは重傷を負い、長期離脱を余儀なくされた。

 なかでも、エジガル・ジュニオは、負傷前の直近8試合で4戦連発を含む8ゴールと、絶好調時のアクシデントだった。その時点でチーム得点王の離脱は、とてつもなく大きな痛手。実際、夏場の3連敗は、その直後に起きている。