2020.05.04

ジーコの抜けた穴を埋めたベベット。
W杯で見せた「悪童」との友情

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 彼の人生を大きく変えたのはまぎれもなく1994年のアメリカW杯だろう。ブラジルは24年間夢見てきたタイトルを手に入れ、ベベットは一躍世界的スターとなった。彼の名を有名にしたのは大会中に決めた3つのゴールだけではない。サッカーファンの心に残る2つのエピソードを残したからだ。

 決勝トーナメントで、ブラジルが最初に当たったのは開催国アメリカだった。地元の声援を背にしたアメリカは予想以上に強く、レオナルドがファウルで退場になるとブラジルは10人となり、敗退の危険も出てきた。しかし、セレソンは負けなかった。ロマーリオが天才的なプレーで敵を抜き去り、柔らかなボールを前方に送ると、ベベットが勝敗を決めるゴールを決めた。それまでブラジルの猛攻に耐えてきたアメリカのGKのトニー・メオラも地面に倒れていた。ブラジルは10人で開催国を破ったのだ。

 ゴールを決めたあと、ベベットはロマーリオに向かって走り、こう叫んだ。

「愛しているよ、兄弟!」